採用単価30万超えでも人が来ない時代に、歯科医院がやるべき4つのアクション

「求人を出しても反応がない」
「スカウトを送っても既読すらされない」

──今、そんな声が医療・歯科業界全体から多く聞こえています。特にこの1〜2年で深刻化しているのが、採用単価の高騰と採用成果の乖離です。

たとえば、看護師や歯科衛生士を1人採用するのに30万円以上の費用がかかっても、応募はゼロ。 面接にすら進めない。 そうした現象が、もはや珍しくなくなってきました。

媒体を変えても効果が出ない、スカウト文を工夫しても反応が薄い──。 そんな状況で、「どこを変えればいいのか分からない」と立ち止まっている事業者も多いのではないでしょうか。

ただ、この状況の根本原因は「媒体の選び方」や「文面の工夫」ではありません。本質は、“誰に・何を・どう届けるか”という採用設計の構造にあります。

今はもう、「求人を出せば来る時代」は終わり。「届く仕組み」を設計してはじめて、採用が“投資”になるフェーズに入っています。

本記事では、なぜ今「お金をかけても採れない」のかという構造的な問題を整理しながら、これからの採用に必要な“戦略設計”の視点をお伝えします。媒体より先に、見るべきものがある──そんな問いかけから、始めてみませんか?

目次

採用コストが上がってるのは“競合のせい”じゃない

「他のクリニックも求人広告強化してるし、うちも出さないと…」
「人が取り合いになってるから、費用が上がるのは仕方ないよね」

──そんなふうに、“競合のせいで採用が難しくなっている”と感じている医療・歯科関係者は少なくありません。確かに、看護師や歯科衛生士、医療事務など特定職種の取り合いは年々激しくなっており、媒体の掲載枠は飽和状態。出稿数が増えれば、当然クリック単価も上がります。

しかし、それは「競合と枠を取り合っている」という表面的な現象にすぎません。問題の本質は、そこではないのです。

反応が取れない構造は「競合が強いから」ではなく「自院の設計不足」

採用の失敗を“競合の強さ”のせいにしてしまうと、本質的な改善は見込めません。なぜなら、本当に反応が出ている医療法人や歯科医院、訪問看護ステーションも、同じ市場環境で戦っているからです。

例えば、同じエリア、同じ媒体に出しているのに応募が来ているA医院と、全く反応がないB医院があるとします。この差を生むのは、「媒体の選び方」でも「出稿タイミング」でもなく、“誰に・何を・どう伝えているか”の設計精度です。

「求人=出せば来る」はもう幻想

かつては、媒体に掲載するだけで一定の応募が見込めました。しかし今は違います。

求職者は複数の求人を比較し、「自分にとってのリアル」があるかどうかで判断しています。以下のような問いに、設計の段階で答えられていないと、いくら広告を強化しても反応は得られません

〇 誰を採りたいのか?(ペルソナは明確か?)
〇 何を伝えるべきか?(求職者の不安に刺さる言葉か?)
〇 どう届けるのか?(HP?媒体?SNS?)

これらがあいまいなままでは、「どこに出しても、誰にも届かない」という悪循環に陥ります。採用は、“求人数の勝負”ではなく、“伝え方の設計力”が問われるフェーズに入っているのです。

戦うべき相手を間違えていないか?

よくある思考の罠に、「他もやってるから、うちもやらなきゃ」という同調圧力があります。しかし、それが発想の出発点になってしまうと、自院の採用は常に後手に回り、価格競争に巻き込まれます。

競合と同じ土俵で戦うより、「自分たちだけが出せる価値を、正しい相手に伝える」設計をしたほうが、コストも成果も確実に変わります。採用難の時代こそ、“他と同じことをやらない”という選択が、差を生む鍵になるのです。

「枠にお金をかけても、届かない設計」のままでは焼け石に水

「高い掲載プランに変えたのに応募がゼロ」
「インディードのスポンサー枠に出したのにクリック数すら伸びない」

──そんな状況、思い当たる方も多いのではないでしょうか?

特に医療・歯科業界では、媒体への依存度が高い分、「露出を増やせば反応が来る」という発想に陥りやすい構造があります。しかし、それはかつて“枠を買えば採れる”時代の話。いまは「出す」ことより「届く」ことが重要視される時代です。

見られていない、読まれていない、だから反応がない

たとえば、ある歯科医院が月15万円の予算で求人媒体に出稿していたとします。目立つ位置に掲載され、写真もきれい、福利厚生もアピールされている。でも、なぜか応募が来ない。

このとき、多くの経営者が真っ先に疑うのは「予算が足りないのでは?」ということ。でも本当の原因は、「届いていない」「読まれていない」「刺さっていない」のどれかです。

反応が出ないのは、予算の問題ではなく、設計の問題。つまり、ターゲット設定・伝え方・導線設計がズレていると、どれだけ広告費を積んでも結果は変わりません。

採用は「打てば響くもの」ではなく「届く構造」が必要

今や、求職者の多くは「複数の求人を並列に比較」し、「直感的にフィットするかどうか」で判断しています。そこで重要になるのが以下の3つの視点です。

1.ターゲット設定:

    →「誰に届けたいのか」が曖昧では、伝え方もブレる
    → 例:20代衛生士と40代看護師では響く言葉が全く違う

    2.伝え方(コンテンツ):

    →「自分ごと」に感じられる言葉・ストーリーがあるか
    → 福利厚生の列挙より「制度のおかげでどう救われたか」の描写が大事

    3.動線設計

    → 興味を持った人が「すぐに・気軽に」接点を持てるか
    → LINE応募、カジュアル面談、DM相談など心理的ハードルを下げる工夫

    この3点が設計されていなければ、どれだけ枠を広げても、“届かないまま”費用だけが消えていくことになります。

    「出しているのに効果がない」は、構造のSOS

    実は、「広告費はかけているのに成果が出ない」という状態は、ある種の“シグナル”です。それはつまり、「設計が時代に追いついていない」という警告とも言えます。

    この段階で必要なのは、媒体を変えることではなく、「誰に何をどう届けるか」を問い直す設計の再構築です。見出しを変える、写真を差し替える、といった表面的な改善だけでは、もはや通用しないのが今の採用環境なのです。


    「どこに出すか」より、「どう届かせるか」。それが、採用成果を左右する最大の分岐点です。

    採用単価の“元が取れない”時代に、何をすべきか?

    「1人採るのに30万。なのに、3ヶ月で辞めてしまった」
    「なんとか採用したけど、戦力になるまでにさらに教育コストがかかる」

    ──そんな声が、医療・歯科業界の現場では頻出しています。

    このように、単に“採ること”だけに注目していると、採用単価が“回収できないコスト”として積み上がっていく危険性があります。つまり今は、「採用=投資」ではなく、「採用=消耗」になっている医院やクリニックが多いのです。

    問題は「お金をかければ解決する」という幻想

    この構造的な問題の本質は、「お金で解決しようとする発想」にあります。

    • 高額なスカウトツールを契約
    • 上位プランの求人媒体に掲載
    • 動画コンテンツを制作してインスタ広告に出稿

    ──どれも一見“前向きな投資”に見えますが、設計が不在のままでは、どれも消耗戦にしかなりません。

    解決のカギは「金で解決」から「設計で解決」への転換

    これからの採用は、“打つ手”の話ではなく、“構造”の話です。以下の4つの視点を再設計するだけで、採用単価は驚くほど改善します。

    ①誰に届けたいのか?(ペルソナの再定義)

    「歯科衛生士を採りたい」「看護師を採りたい」だけでは不十分です。どんな人材が欲しいのかを分解し、ペルソナを再定義していく必要があります。ポイントは条件だけでなく、“どんな状況にいる、どんな価値観を持った人なのか”まで描けているかが鍵となります。

    例:
    ・今の職場にどんな不満を持っている?
    ・子育て中?ひとり暮らし?扶養内?
    ・仕事に何を求めている?(安定/成長/人間関係)

    ②どこにその人はいるのか?(導線設計)

    せっかくペルソナが明確になっても、その人が見ていない媒体に出しても意味がありません。

    求人媒体、Instagram、TikTok、ハローワーク、地域の勉強会──タッチポイントを再構築することが不可欠です。

    ③どう書けばその人に刺さるのか?(原稿構成)

    今の求人原稿、「どれも似たり寄ったり」になっていませんか?給与や休日数だけで勝負しても、比較されるだけです。

    求職者の“不安”に寄り添い、“自分ごと”に感じられるストーリー設計が不可欠です。

    ④応募後にどう不安を潰せるか?(初期対応フロー)

    反応があったあとも、「面接が怖い」「いきなり応募は不安」という人が多い今、いきなり面接ではなく、“軽い接点”を挟むステップ設計が有効です。

    例:
    ・担当者とのLINEチャット
    ・カジュアル面談の導入
    ・見学OKの案内

    設計があってはじめて、打ち手が“投資”になる

    逆に言えば、この4つの構造を整えていれば、媒体もスカウトもSNSも、すべてが“成果の出る武器”になります

    今の採用単価が高すぎると感じているなら、それは媒体のせいではなく、「構造不足のまま、お金をかけてしまっている状態」かもしれません。


    「設計してから打つ」──これが、元を取るための必須条件です。

    採用は「広告コストの話」ではなく「経営設計の話」

    「とにかく人が来ないから、採用費用を積み増した」
    「1人30万円かかったけど、仕方ないよね」

    ──そんなふうに、“採用コスト”を広告費として捉えるクリニックや医院は少なくありません。ですが、本来採用は経費ではなく、経営そのものを支える“投資”であるべきものです。

    採れた人がすぐ辞めてしまう、職場に合わない、成長しない

    ──こうした結果が続けば、いくら単価をかけても医院にとってのリターンはゼロ。むしろマイナスです。

    いま、「採用単価をどう下げるか」より、「採れる仕組みをどう設計するか」に発想を変える必要があります。

    採用単価は“経営判断”の指標である

    よく「1人採るのに30万円は高い」と言われますが、それはあくまで“成果次第で変わる”数値です。

    〇 採った人が定着し、3年活躍してくれるなら安い
    〇 数ヶ月で辞めてしまえば、どんなに単価が安くても高くつく

    つまり採用単価は、“いくらかけたか”ではなく“どう活かせたか”で初めて評価できる指標です。

    これは、もはや広告予算の話ではなく、中長期の人材戦略=経営設計の話なのです。

    「どんな人を採るか」が、「どんな組織になるか」を決める

    特に医療・歯科業界では、採用した人材がそのまま組織の“空気”や“文化”に直結します。
    たとえば…

    ✓ コミュニケーションが得意な人が増えれば、連携がスムーズになり
    ✓ 学び続ける姿勢を持った人が増えれば、スタッフ間の成長循環が生まれる
    ✓ 自分の仕事に誇りを持つ人が増えれば、患者との関係も安定する

    つまり、誰を採るか=どんな未来をつくるかを決めているのが「採用」です。

    採用は「短期の補充」ではなく「中長期の投資」

    1人採るだけで「なんとか人手が足りた」と思ってしまうと、その場しのぎの“補充思考”から抜け出せません。けれど本来、採用は中長期の安定・成長をつくる設計図の一部であるべきです。

    ● この人は、どんなふうに育っていくか?
    ● 半年後・1年後にどんなポジションで活躍できるか?
    ● そのために今、どんな環境を用意すべきか?

    こうした視点があって初めて、「採って終わり」ではなく、「育てて活かす」採用に転換できます。

    “お金をかける”から“未来を設計する”へ

    採用にかかるお金は、ただの費用ではなく、「組織の未来を買うコスト」です。

    広告単価だけを見て一喜一憂するのではなく、その先にある組織づくり・人材の成長・経営の安定性を見据える視点が、これからの採用には不可欠です。


    採用は、経費ではなく戦略。単価の高さを嘆くより、「それをどう活かすか」に目を向けること。それが、医療・歯科業界の採用戦略を次のステージへ進める第一歩です。

    高単価でも採れる組織 vs いくらかけても採れない組織

    採用に月数十万円を投じても応募がゼロ──。

    一方で、同じエリア・同じ職種で、広告を出せばすぐに反応がある医院も存在します。しかも、採用単価が40万を超えても「元が取れる」と言い切れるケースも少なくありません。

    この違いはいったい何なのか?

    答えはシンプルで、「戦略を持って採用に取り組んでいるかどうか」です。

    媒体に出してるのに成果が出ない組織の共通点

    成果が出ない組織には、ある一定の共通パターンがあります。

    ・とりあえず求人を出しているが、誰に向けたものか曖昧
    ・内容が他院と似たり寄ったりで、選ばれる理由が伝わらない
    ・応募後の対応が遅く、不安を解消する導線がない
    ・「応募してくる人の質が悪い」と採用市場のせいにしている

    これらはすべて、“戦略がないまま”採用に臨んでいる状態です。つまり、媒体を「出す先」としてしか捉えておらず、「届け方」「受け皿」「体験設計」が抜けているのです。

    「高単価でも採れる組織」がやっていること

    一方で、採用単価が高くても成果を出している組織には、明確な共通点があります。

    ①届ける相手(ペルソナ)を明確に定めている
     →「20代前半の第二新卒層」「30代で時短勤務希望」など、具体的に絞っている

    ②自医院のリアルな価値・文化を言語化している
     → 福利厚生ではなく、「この制度がどう生活を変えたか」をストーリーで伝える

    ③応募後の導線と体験を設計している
     →「まずは見学から」「LINEで気軽に相談OK」といった接点があり、心理的ハードルを下げている

    ④採用における“判断軸”を組織として共有している
     → ただ“採れそうな人”ではなく、“この組織にフィットする人”を明確に定義して選んでいる

    こうした医院・クリニックでは、採用単価は高くても、長期的な人材定着と戦力化に成功しているため、結果的に「安く済んでいる」という状態をつくり出しています。

    採用単価は「戦略の精度」で決まる

    つまり、採用単価の差は、広告費の多寡ではなく、構造の有無で決まります。

    「どうせ取れないから、また媒体を変えるか…」

    という発想を繰り返すのではなく、“組織としての採用設計力”を高めることが、最も確実で本質的な解決策なのです。

    採用は「試行錯誤できる力」を持つ組織だけが勝つ時代へ

    今後、医療・歯科業界の採用はさらに難易度が上がっていくでしょう。

    そのなかで成果を出し続けるのは、広告の知識を持っている医院ではなく、“現状を問い直し、戦略を継続的に見直す力”を持っている組織です。

    ✓ なぜこの人に響いたのか?
    ✓ どこで離脱されたのか?
    ✓ 何が不安として残ったのか?

    このように、採用活動そのものを「思考と改善の対象」として捉えられる組織だけが、今後の競争を勝ち抜いていくことになります。


    高単価でも採れる組織は、「採用を経営戦略として扱っている」。いくらかけても採れない組織は、「採用を単発のイベントとして見ている」。その差は、成果という形ではっきりと表れていきます。

    明日から実行できる4つのアクション

    「採用単価が上がってるのに、成果が出ない」──

    そんな状況を変えるには、媒体を変えるより先に「採用の設計そのもの」を問い直す必要があります。いきなりすべてを変えなくても大丈夫。まずは、小さな一歩から始めてみましょう。

    以下の4つの行動は、明日から実践可能な具体アクションです。

    アクション①:自院の「ペルソナ」を改めて1人分だけ書き出す

    「どんな人に来てほしいか」を、ぼんやりとではなく、“たった1人の顔が思い浮かぶレベル”で言語化してみましょう。

    例:

    • 年代、家族構成、現在の職場、感じている不満、理想の働き方…
    • 例:「30代前半、育休明け。現在は総合病院で時短勤務。家庭との両立に悩んでいる」

    この精度が上がるほど、求人内容も導線も「刺さる設計」に変わります。

    アクション②:採用ページや原稿を“リアルなストーリー”に1つ差し替える

    制度や待遇の羅列ではなく、「実際にスタッフがその制度をどう活用して、どう救われたか」というストーリーを1つ入れてみてください。

    例:

    • 「子どもが熱を出したとき、電話一本で直帰できた」
    • 「育休から戻ってもリーダーポジションを任せてもらえた」

    これだけで、求職者が“自分ごと”として読んでくれる確率がぐっと上がります。

    アクション③:「応募前に接点を持てる導線」を1つ用意する

    「応募=面接」という構造は、いまや離脱の温床です。心理的ハードルを下げるために、“応募前の接点”をひとつだけでも整備してみましょう。

    例:

    • LINEでの事前相談を導入する
    • 「カジュアル面談OK」「見学だけでも歓迎」と原稿に明記する

    アクション④:採用結果を「応募数」ではなく「定着率」で振り返ってみる

    最後に、“採れたか”ではなく“残ったか”で採用を評価してみる視点を持つこと。過去6ヶ月〜1年で採用した人のうち、

    • 続いている人と辞めた人の比率は?
    • 定着している人の共通点は?

    ここから、「うちが本当に採るべき人材像」が見えてきます。


    「採用単価が高い=媒体が悪い」と決めつける前に、まずは“戦略を問い直す”ことから始めましょう。届け方・伝え方・受け皿の設計を見直すだけで、採用の成果は確実に変わります。

    採用は、経費ではなく「未来への設計」。その第一歩は、今、あなたの手元から踏み出せます。

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