求人票を整えても応募ゼロ?本当にズレているのはどこか
・「求人票をきれいに作ったのに、まったく応募が来ない」
・「掲載媒体を変えても反応がない」
・「たくさんの求人媒体に掲載しているのにほとんど反応がない」
──そんな悩みを耳にすることが増えました。
多くの採用担当者が、求人票の内容に問題があると考えます。
しかし、実はそれ以前に見落とされがちな本質的な問題があります。
それは、「誰に向けて書いているか」というターゲット設計のズレです。
この記事では、医療・介護・歯科業界の採用現場で頻発する「ターゲットのズレ問題」を掘り下げ、ズレを防ぎ、応募数を確実に増やすための実践ポイントを詳しく解説していきます。
求人票をどれだけ整えても、「ターゲット」がズレていたら応募は来ない
採用現場では、ターゲット設定を誤った結果、応募が伸び悩むパターンが多発しています。代表的な失敗は以下の通りです。
『自分たちが欲しい人』目線
「こういう人に来てほしい」と理想像を語り、それをそのまま求人票に反映してしまうケースが見受けられます。
例えば、
・コミュニケーション能力に長けており、接客力もある
・臨床経験が5年以上ある
・成長意欲があり、何事にも挑戦しようとする
確かに、このような方に来て欲しいという要望はあると思いますし、そのようなペルソナを設定すること自体は問題ありません。ここで問題は、その要件が「今転職市場にいる求職者像」とズレていることです。
『このような人が欲しい』という願望を押し付けるだけでは、求職者にはまったく響きません。
スペック重視のハイスペック要求
「理想の未来組織像」を思い描き、そこにマッチする人材を求めて、求めるスキル・経験水準を吊り上げてしまうパターンも多く見受けられます。
・管理職経験者
・リーダーシップ必須
・資格職として即戦力で活躍してくれる
確かに、会社や医院の未来を考えたら、そのような人材がいてくれたらより成長を加速してくれると思います。ただし、そんな高い条件を満たせる人材は限られます。
結果、ほとんど誰にも応募されないという悲劇が起きます。
横並び型求人票
「他社もこのくらいの条件で書いているからうちも」や「ここが上手くいっていると聞いたから同じように求人を書けば同じようの応募が来るかも」と、無難な求人票を量産するパターンも多いです。
・アットホームな職場です
・やりがいのある仕事です
・和気あいあいとした職場でスタッフの仲が良いです
本当にそうかもしれません。ただ特徴がなく、ありきたりな表現ばかりになり、差別化できずに埋もれてしまいます。
成功のポイントは「求職者のリアル」起点
求人票は、「自分たちが欲しい人材像」ではなく、「応募する人のリアルな心理や背景」に合わせて作るべきです。
ここを間違えると、どれだけ表現を磨いても徒労に終わります。
ターゲットの「温度」と「状態」が見えていない
求職者にも“温度差”がある
単に「訪問看護師」「歯科衛生士」という職種カテゴリだけでは、ターゲットを適切に絞り込めません。
重要なのは、求職者の「転職意欲の温度感」を把握することです。
求職者は、大きく次の3層に分類されます。
顕在層(今すぐ転職したい人)
☒すでに辞意を固めている。
☒退職手続き中、または直後の人も含む。
☒情報収集にも積極的で、具体的な求人を探している。
準顕在層(なんとなく不満を抱えている人)
☒まだ退職する決意はしていないが、現職への不満が募っている。
☒良い求人があれば転職したいと考えている。
☒「いいところがあれば」というスタンス。
潜在層(転職意欲は低いが情報収集している人)
☒現状の職場に大きな不満はないが、キャリアの選択肢を探っている。
☒将来的な転職に備えて情報を集めている段階。
問題点:「顕在層」しか見ていない求人が多すぎる
多くの求人票は、**「今すぐ転職したい顕在層」**だけをターゲットにしています。
たとえば──
こうした文言は、準顕在層・潜在層にとっては「私には関係ない」と感じさせ、応募対象外になってしまうのです。
転職市場ボリュームは、準顕在層・潜在層が大半です。
ここを取り込めなければ、応募者はどんどん減っていきます。
ズレたまま出し続けると、「費用が垂れ流し」になる
採用費用は「成果が出ない限り、純粋なコスト」
人材紹介の使用、求人広告、有料スカウト媒体、SNS広告、Indeed有料、リスティング広告…
いずれも、費用が発生します。
ターゲットがズレていれば、使用する意味がありません。
採用活動において重要なのは、何の媒体を使うのか、どうやってやるのかという『手段』よりも『戦略』が大切です。
💡どんな人に届けたいのか。
💡その人たちが今、どこで何をしているのか。
💡どんな情報に触れたら行動を起こすのか。
これを間違えたまま進めると、お金も、時間も、労力も無駄になってしまいます。
ズレを直すために必要なのは「ペルソナ設定」
ペルソナ設計とは?
ただの属性(年齢、性別、経験年数)だけを決めるのでは不十分です。
「心の動き」と「行動パターン」まで具体化する必要があります。
本当のペルソナ設定とは、求職者の内面に迫る作業です。
ペルソナ設定で深掘りすべき5つのポイント

①ライフスタイルと生活環境を描く
住まい/通勤/家族構成:どこに住んでいるか(都心/郊外/実家暮らしなど)、通勤時間はどれくらいか、家族の有無(子育て中・独身・介護中など)
健康面・生活リズム:夜勤明けでの疲労、持病の有無、ストレス耐性など
日常の過ごし方:休日の過ごし方、起床・就寝のリズム、買い物や移動手段
例:「30代前半の女性、都内一人暮らし。電車で通勤15分。子育てと夜勤の両立が難しいと感じている。」
② これまでのキャリアとモヤモヤ
前職/経験/スキル:どんな業種でどんな役割だったのか。訪問看護の経験は? ブランクはあるか?
職場での悩み:人間関係・業務量・休みが取れないなど、辞めたいと思うきっかけになった出来事
本音のギャップ:「理想の働き方」と「現実」との間にある葛藤
例:「病棟で6年間勤務。今は訪問看護に関心があるが、1人で回るのが不安でなかなか踏み出せない。」
③心を動かすキーワード・価値観
どんな言葉に惹かれるか:「未経験歓迎」「研修が充実」「家庭と両立」「人間関係が良い」など
性格・価値観:慎重派か、挑戦派か。安定志向か、キャリアアップ志向か。
“安心”と感じる条件は何か:給与よりも勤務日数? フォロー体制? 働く人の雰囲気?
例:「『子育てママ活躍中』という表現に安心感を覚える。給与よりも柔軟なシフト希望。」
④転職を考える“きっかけ”と“ブレーキ”
転職を意識した瞬間:怒られた/異動/働き方が合わない/夜勤で体を壊した
一歩踏み出せない理由:オンコールが怖い/未経験への不安/人間関係の不安
希望給与/希望条件:最低ラインはいくら? どこまで妥協できるか?
例:「夜勤が続き、体力的に限界を感じて退職。次は日勤中心で、土日休みが希望。ただし給与が下がるのは不安。」
⑤日常で見ている情報源と行動パターン
SNS/メディア習慣:Instagramで看護系アカウントをチェック/YouTubeで転職Vlog視聴/TikTokで現場の雰囲気を確認
検索行動/接触タイミング:通勤中にスマホで求人閲覧/夜に寝ながらSNSチェック
誰の声に影響を受けるか:元同僚の話/家族の意見/経営者
例:「夜22時頃にスマホで求人をチェックする癖がある。Instagramで『#訪問看護師の1日』を見るのが好き。」
ここまで掘れば、「刺さる言葉」が見えてくる
「転職=大きな決断」だからこそ、小さな不安を解消する言葉が必要
「今すぐ転職しない人」にも響く“情報発信”が必要
ペルソナをリアルに設計できれば、求職者に自然に共感され、
「この職場なら安心できそう」と感じてもらえる求人票が作れるのです。
まとめ:応募が来ない本当の理由は、「ターゲット設計の甘さ」だった
求人票がきれいでも、ターゲットがズレていたら意味がありません。
現場や経営層の理想ではなく、**今この瞬間に転職市場に存在している「リアルな求職者像」**に寄り添うこと。
そのために必要なのは、
💡温度感を捉えること
💡状態を把握すること
💡本音と葛藤に寄り添うこと
この3点を徹底することです。
採用成功の第一歩は、「欲しい人材像」ではなく、「今ここにいる人たち」に目を向けることから。
あなたの採用活動が、ターゲット設計から見直され、より成果につながることを願っています。