「面談をしても、毎回『特にありません』で終わる」「相談を受けた後、どう対応すればよいか迷う」。訪問看護ステーションで面談の時間を設けても、スタッフの困りごとや希望を十分に聞けるとは限りません。
スタッフ面談では、本人の考えを聞いたうえで、必要な支援と次の対応を決めることが大切です。質問を増やすだけでなく、目的の伝え方や面談後の返事も見直してみてください。
この記事では、在職中のスタッフを支援するための面談について、準備、質問例、対応に迷う場面での聞き方、面談後の確認までを解説します。
訪問看護のスタッフ面談は、目的を伝えて始める

業務報告だけでは分からないことを聞く
訪問記録が揃い、必要な連絡が届いていても、スタッフが今の働き方をどう感じているかまでは分かりません。単独で訪問する時間が長いと、日々のやり取りは利用者への対応や申し送りが中心になり、自分の迷いや希望を話す機会が限られることがあります。
スタッフ面談は、そうした話をするための時間です。仕事で困っていることに加え、続けたい担当業務や、今後学びたいことも聞けます。本人にとって相談が必要な点は何か、管理者が支援できることは何かを一緒に考えます。
始めるときには、「今日は、最近の仕事で気になっていることや、今後やってみたいことを聞きたいと思います。必要な対応があれば、一緒に考えましょう」と伝えます。面談という名称だけに頼らず、何について話す時間なのかを示してください。
悩みをすべて話してもらうことや、その場で必ず結論を出すことを目標にする必要はありません。特に変更を望んでいない場合も、今の働き方や相談方法で続けられそうかを確認できます。
面談の目的と、相談内容を人事評価に使うかを伝える
人事評価の面談には、評価の理由や今後の目標を伝える役割があります。一方、支援を目的とする面談では、現在の困りごとや希望を聞きます。どちらも必要ですが、目的が曖昧なまま進むと、スタッフは何を話せばよいのか迷います。
可能であれば日程を分け、同じ日に行う場合は「前半は評価、後半は今の働き方について話します」と区切ります。評価についての話が長引いたら、相談の時間を削って終わらせず、続きを話す日時を決めます。
面談を始める前に、相談内容を人事評価に使うか、誰に共有するかを、事業所の方針に沿って説明してください。方針が分からない場合は責任者に確認し、「評価には一切使いません」「誰にも伝えません」と安易に約束しないようにします。業務上の事実確認や指導が別途必要になった場合には、その理由と進め方を伝えます。
面談をした回数だけで、スタッフの満足度や定着への効果を判断することもできません。相談への返事をしたか、合意した支援を実施したかなど、面談後の対応まで含めて振り返ります。
面談前に、話す時間と議題を決める

訪問予定と連絡当番を調整する
訪問の合間に予定を入れるだけでは、出発準備や電話対応に追われ、落ち着いて話せないことがあります。本人と管理者の訪問、記録、引き継ぎの時間を確認し、前後の仕事に無理が生じない時間帯を選びます。勤務時間外に話すことを前提にせず、短時間勤務のスタッフにも無理のない候補を用意します。
面談中の電話や来客を誰が受け持つかも決めておきます。引き受ける人に必要なのは時間帯と連絡方法であり、面談内容を伝える必要はありません。急ぎの連絡だけは管理者に届くようにします。
場所は、会話が周囲に聞こえず、人の出入りが少ないところを選びます。オンラインの場合も、双方が周囲を気にせず話せる場所かを確認してください。急な訪問対応で延期する場合は、「また時間があるときに」で終わらせず、代わりの日時を示します。
時間や頻度は、本人の勤務状況と相談内容に合わせます。短時間で始めることはできますが、話しきれない内容を無理に終わらせる必要はありません。続きが必要なら、その場で次の機会を決めます。
前回の約束を確認し、今日の話題を絞る
準備では、最初に前回の面談で引き受けたことを確認します。「予定を見ておきます」と答えたままの相談があれば、新しい質問を増やす前に、その結果を返す準備が必要です。まだ確認中なら、何が分かっていて、何を待っているのかを伝えられるようにします。
次に、今回聞きたい話題を二つか三つに絞ります。質問例をすべて使おうとすると、本人の説明を聞く時間が足りなくなります。勤務予定などの資料を見る際も、「訪問後の連絡が増えた」という事実と、「負担を感じているはず」という推測を分けておきます。
事前の案内は、「前回相談した連絡の分担と、最近の仕事で気になっていることを話したいと思います。ほかに先に話したいことがあれば、当日教えてください」程度で十分です。長い質問票の記入を一律に求めず、その場で話す方法も残します。
当日は本人の希望も聞き、今回扱う話題を決めます。管理者が用意した質問は会話のきっかけです。別の相談が出たら、内容の重要度と残り時間を見て順番を変えます。
スタッフ面談の質問は、具体的なものから始める

仕事の負担は、件数だけで判断しない
「最近どうですか」だけでは、どの期間の何について答えればよいか迷うことがあります。まずは「今週の訪問前後で、予定どおりに進まなかった仕事はありますか」と、一つの出来事を思い出せる質問にします。
「出発前に確認が重なりました」と返ってきたら、「どのような確認でしたか」と聞きます。答えを聞く前に、時刻、相手、理由を続けて尋ねないようにしてください。質問を一つずつ進めることで、本人の説明を聞きながら次に尋ねる点を選べます。
訪問件数が同じでも、移動や連絡、予定変更の状況によって仕事の進めやすさは変わります。「件数は増えていませんよね」と結論を急がず、どの作業が進まなかったのかを聞きます。質問は、本人の話に合わせて次の中から選べます。
- 「その対応で、後回しになった仕事はありましたか」
- 「迷ったときに相談できる相手はいましたか」
- 「同じことが起きる日と、起きない日には違いがありますか」
一日の出来事だけで、普段の負担を決めつけないことも大切です。繰り返していることなのか、その日に限ったことなのかを聞き、必要な対応を考えます。
続けたい仕事や学びたいことも質問する
困りごとだけでなく、「最近、自分なりに取り組めたと感じた仕事はありますか」「これからも続けたい関わり方はありますか」と聞くと、本人が大切にしている仕事を知るきっかけになります。
学びたいことが出たら、すぐに受講する研修を決めず、どの場面を経験したいのかを尋ねます。「家族への説明を学びたい」という希望なら、話し始めるタイミングなのか、相手の疑問を聞くことなのかによって、必要な支援は異なります。
「学ぶために、どのようなサポートがあるとよいですか」と聞き、振り返りの時間や同行の機会など、用意できる方法を相談します。学びたい気持ちだけを理由に、担当業務を増やさないようにしてください。今の業務量で取り組めるかも確認します。
役職や新たな役割を望むことだけが、将来の希望ではありません。「今の担当業務を深めたい」「まず日々の仕事に慣れたい」という考えも受け止め、希望が変わったときには改めて相談できるようにします。
助言する前に、求めている支援を確認する
スタッフが「新しい担当が気がかりです」と話したとき、手順を知りたいのか、相談先を確認したいのかで、必要な返答は変わります。管理者自身の経験を話す前に、「まず確認しておきたいことは何ですか」と尋ねます。
本人は解決方法を求めているとは限りません。既に試した方法への意見がほしい場合や、迷った経緯を聞いてほしい場合もあります。「一度話を聞くところからでよいですか。それとも、変えられることを一緒に考えたいですか」と確認できます。
助言をするときは、「一つ方法を提案してもよいですか」と聞き、理由と条件を添えます。本人が難しいと答えたら、意欲の問題にせず、実行を妨げる事情を尋ねてください。管理者の経験が、今の担当業務にそのまま当てはまるとは限りません。
面談で対応に迷いやすい三つの場面

「特にありません」と言われたとき
返事が短い理由は、その場では分かりません。本当に相談がない場合も、質問が広くて答えに迷っている場合もあります。沈黙や表情だけから、本人の性格や健康状態を推測しないようにします。
話題を絞るなら、「今週の連絡の分担で、変えてほしいところはありますか」と聞けます。それでも答えがなければ、さらに悩みを探そうとせず、「後で思いついたら教えてください」と伝えます。希望があれば文章で伝える方法も選べますが、回答を宿題にしないことが大切です。
管理者自身の言動や対応については、その管理者には相談しにくい場合もあります。別の責任者や相談窓口を案内するときは、実際に利用できる連絡先と、話した内容が誰に伝わるのかを確認してください。別の相手に相談することを、自分への拒否と受け取る必要はありません。
本人と管理者の見方が違うとき
「自分だけ急な依頼が多い」という相談に対し、管理者は分担できていると考えることもあります。まずは「そう感じた直近の場面を教えてもらえますか」と、本人が経験した出来事を聞きます。
管理者が把握している情報を伝える際は、「今月の依頼件数では、このようになっています」と範囲を示します。件数が同じでも、依頼の時刻や準備に使える時間は異なります。「件数以外に、負担の差を感じる点はありますか」と尋ねてください。
同僚の意図についての説明が出ても、未確認の内容まで事実として認める必要はありません。本人の負担を受け止めることと、相手の行動を確認することを分けます。
そのうえで、「今後、依頼の受け方がどう変わるとよいと思いますか」と希望を聞きます。減らしてほしいのか、早めに知らせてほしいのかによって、検討する内容は変わります。その場で約束できない場合は、必要な調整を説明します。
プライベートに関わる相談を受けたとき
勤務の相談に私生活の事情が関わっていても、背景をすべて聞く必要はありません。一定期間だけ遅い時間の訪問を避けたいという希望なら、まずは期間、難しい時間帯、可能な業務を確認します。本人が家族の事情に触れても、それをきっかけに質問を広げすぎないようにしてください。
健康に関する相談でも、診断名や詳しい経過を面談の中心にせず、仕事で難しいことや希望する配慮を聞きます。管理者の印象で医学的な判断をせず、所定の手続きが必要な場合や、専門の相談先を紹介する場合は、担当者と進め方を確認します。
本人が話したくない内容には踏み込まず、勤務の調整に何が必要なのかを説明します。事情を聞くことと、希望どおりの変更を約束することは分けて扱います。
面談で受けた相談を、具体的な対応につなげる

急ぎの報告は、次の面談まで待ってもらわない
利用者やスタッフの安全に関わる出来事、進行中の業務で直ちに確認が必要なことは、次の面談日まで待たずに報告してもらいます。定期面談は、日常の相談や緊急連絡を置き換えるものではありません。
面談中に急ぎの対応が必要な内容を知った場合も、予定した質問を続けることより、事業所の手順に沿った確認と連絡を優先します。正式な報告が必要な事柄を、面談メモに残すだけで終わらせないようにしてください。
最後にまとめと次の行動を確認する
終了前には、「急な連絡で記録の時間が後ろにずれるため、連絡を受ける方法を相談したいのですね」と、聞いた内容を短く返します。「違うところや、抜けているところはありますか」と尋ね、理解が合っているかを確認してください。
対応を決める際は、次の四点をそろえます。
- 誰が担当するか
- 何を確認し、何を行うか
- いつまでに返事をするか
- いつ結果を振り返るか
「管理者が金曜までに連絡の分担を確認し、翌週月曜に変更できる範囲を伝える」というように、具体的に決めます。変更を試すと決めたら、「来週一週間試して、金曜日に振り返る」など、結果を話す日も決めます。他の責任者の判断が必要なら、確認する段階と変更が決まった段階を区別します。結論を出せる日が分からない場合も、経過を伝える日は決められます。
議事録と共有は、対応に必要な範囲に限る
議事録には、相談された勤務上の問題、合意した対応、担当者、返事をする日、次に確認することを残します。「不満が多い」「消極的だった」といった印象ではなく、本人の発言と確認できた事実を書きます。
他の人に共有する場合は、誰に何を伝えるのか、何のために必要なのかを本人に説明します。勤務の調整に必要なのが時間帯と期間なら、家庭の事情まで伝える必要があるとは限りません。
健康や私生活の詳しい情報を、通常の勤務連絡と同じ場所に書き込むことは避けます。保存先、閲覧できる人、保存期間は事業所の取り扱いに従い、不明な点は責任者に確認します。
返事をした後も、試した結果を聞く
約束の日には、希望どおりに進んだ場合も、難しかった場合も本人へ返事をします。期限に間に合わないと分かったら、未確認の点と次の連絡日を知らせます。「検討中です」だけを繰り返さず、どこまで進んでいるかを伝えてください。
変更を試した後は、「記録を始めるまでの中断は減りましたか」「新たに困ったことはありませんか」と、実際の仕事への影響を聞きます。他のスタッフに負担が移っていないかも確認し、続けるか、別の方法に変えるかを相談します。
方法が合わなかったときに、本人の努力不足と決めつけないことも大切です。試した条件と実際の勤務が違っていなかったかを見直し、次の対応を決めます。
スタッフ面談では、何を聞くかだけでなく、話をどう受け止め、その後どう対応するかが問われます。本人が相談したいことを聞き、管理者ができることと確認が必要なことを伝え、約束した返事をする。この流れを続けることが大切です。
まずは前回の相談に未回答がないかを見直し、次に話す時間を確保してください。多くの質問を用意するより、一つの相談に具体的に応じることから始められます。

監修者:牟田 健登(Kento Muta)
株式会社クルージズ・テクノロジーズ代表取締役。2021年に創業し、在宅医療・介護業界に特化した人事コンサルティング・人事評価SaaSを展開。訪問看護ステーションや訪問介護ステーションを中心にサービスを展開中。




