医療・歯科業界の現場で、採用に悩んでいない事業所・クリニックは少ないのではないでしょうか。
「求人を出しても応募がない」「面接しても辞退される」「入職してもすぐ辞めてしまう」
──そうした課題に対して、採用支援会社の活用を検討する法人も増えてきました。
ただし、外部パートナーの選び方を間違えると、かえって時間と費用が無駄になるどころか、現場の疲弊を加速させる危険もあります。
本記事では、医療介護業界における採用の特徴をふまえながら、失敗しない採用支援会社の選び方をお伝えします。
採用支援会社は“指示をくれる相手”ではない
まず押さえておくべきは、採用支援会社とは単なる求人作成の外注先ではないということです。業者のように「言われたことをやるだけ」のスタンスでは、採用活動の本質的な改善は見込めません。
本当に成果を出す支援会社とは、法人の採用方針や現場の課題を深く理解し、「どんな人材を採用すべきか」「その人にどうアプローチすべきか」を共に考えてくれる存在です。単なる応募数の増加ではなく、「適切な人材と出会い、長く働いてもらう」ことをゴールとする伴走型の支援が求められます。
そのためには、支援会社が“職場の理念や文化”“求める人物像”“入職後のキャリアパス”といった定性的な要素を丁寧に言語化し、求職者の心に届くストーリーを構築する力が必要です。これは単なる採用広報ではなく、ブランディング戦略の一部でもあります。
医療・歯科業界に特有の採用の難しさとは?
採用が難航する理由は、医療・歯科業界ならではの構造的な特性にあります。
構造的な人材不足
高齢化が進む日本では、医療・歯科サービスのニーズが急増しています。それに反して、業界に従事する若年層は減少傾向にあり、人材の需給バランスは大きく崩れています。慢性的な人材不足が続くなかで、求人広告の工夫だけでは限界が出てきています。現代では企業・クリニックが求職者を選ぶという構造から、求職者が自分に合う職場を選ぶ時代です。応募する前に様々な情報を収集する傾向にあることから、従来の求人広告の運用だけでは上手くいかない傾向があります。
業務の過重負担
現場の業務は肉体的・精神的にハードであり、労働環境が求職者にとって厳しく映ることも少なくありません。加えて夜勤やシフト勤務など生活への影響も大きいため、求職者は職場選びに慎重になります。
入職後のミスマッチ
多くの離職理由は「人間関係」や「職場の雰囲気」、「キャリアアップ」など求人票では伝わらない部分にあります。職場の実態や文化を正確に伝えられていないことが、定着率の低さに繋がっているのです。
このような環境下では、「求人票を工夫して良く魅せる」という施策では限界があります。従来の求人媒体だけでなく、SNSなどを活用し自社やクリニックの雰囲気や想いなどといった“職場のリアル”を発信し、他社との差別化を図る必要があります。
採用支援会社を選ぶための5つの基準
1. 業界への深い理解があるか
医療の現場には、病院・老健・訪問看護・デイサービスなど多種多様な施設形態があります。それぞれの組織で求められるスキルセットや人材像は異なります。また歯科業界でもクリニック勤務と訪問歯科で求められるスキルセットや人材像は異なります。
例えば、日勤のみ希望の看護師、ワークライフバランスを重視する介護スタッフ、キャリアアップを目指す歯科衛生士など、求職者のニーズは多様です。それを踏まえた上で、「誰に、何を、どう届けるか」を一緒に考えてくれる会社を選びましょう。
2. 求人に「生活のリアル」が描かれているか
魅力的な求人とは、給与や勤務時間・福利厚生といった“条件”だけでなく、「ここで働いたら、どんな日常が待っているか」を具体的に描いているものです。
たとえば、「子どもの急な発熱に柔軟に対応できた」「育休復帰後も管理職として活躍している」など、現場スタッフの実体験を盛り込んだストーリーは、求職者に強い共感と安心感を与えます。
優れた支援会社は、そうしたエピソードをヒアリングし、求職者の感情に届くコンテンツとして設計するノウハウを持っています。
3. 伴走型で対話ができるか
「これをやれば応募が増えますよ」という一方的な指示型の支援では、採用活動の本質的な改善は見込めません。
むしろ、「なぜ今の採用に違和感があるのか?」「どこにズレがあるのか?」といった問いを通じて、思考を整理し、方針を自分たちの言葉で決められるよう導いてくれる存在こそ、信頼できるパートナーです。
支援会社の担当者とのやりとりが、単なる報告の場ではなく、“考えが深まる時間”になっているかは大きな判断材料となります。
4. 数字だけでなく空気を伝えられる力があるか
「応募数」「PV数」「クリック率」などの定量的な成果は分かりやすい指標ですが、それだけで職場の魅力は伝わりません。
実際に働いている人の言葉、雰囲気、価値観といった“空気感”を丁寧に表現できる会社こそ、求職者の共感を得る求人をつくれます。SNSの活用やインタビューコンテンツ制作など、感情に訴える仕組みづくりができるかもチェックポイントです。
既述のとおり、今の時代は求人だけで職場の魅力を伝えることには限界があります。また求職者も求人に書いてあることだけでなく、ホームページや採用サイト・SNSなどをチェックし、”自分に合う職場”かどうかの情報収集を行います。そういった“職場のリアル”な部分を丁寧にヒアリングし、様々な気付きを与えてくれる会社が良い採用支援会社と言えます。
5. 採用後の定着・育成まで見ているか
採用はあくまで“スタート”です。入職後の育成やフォローの仕組みまで見据えた支援ができる会社は、短期的な成果ではなく、長期的な人材確保に貢献します。
特に、医療・歯科業界では「辞めずに長く働ける環境づくり」が最大のテーマです。だからこそ、支援会社には制度の見直しや育成体制の整備といった“定着支援”にも関与できる体制が求められます。
採用が変わった!ある中規模法人の事例
ある医療法人では、以前から採用がうまくいかず、「とりあえず求人を出す」「数を打つ」スタイルを続けていました。しかし、応募は少なく、内定後の辞退や早期離職も相次いでいました。
そこで、新たに「現場を深く理解し、ストーリー設計から伴走する」支援会社に依頼。以下のような取り組みを行いました。
・条件訴求からスタッフの実体験を元に、求人をストーリー化
・Instagramを活用し、魅力だけでなく課題に感じている部分などリアルな職場の様子を発信
・応募前に「カジュアル面談」の機会を設置
結果、応募数は2倍以上に増加。さらに、採用後の離職率も明らかに改善され、現場からは「合う人が来るようになった」「採用が楽しみになった」との声が上がったそうです。
採用支援会社を活用するメリットとは?
採用支援会社をうまく活用することで、多くの法人が採用課題を解決する突破口を見出しています。以下は、その主なメリットです。
1. 採用ノウハウの外部化による効率化
2.求人の訴求力が飛躍的に向上する
3.採用戦略を客観的に見直せる
4.必要な時だけ利用でき経営リスクが少ない
1. 採用ノウハウの外部化による効率化
医療や歯科の現場では、日常業務そのものが非常に多忙です。経営者もスタッフも採用活動にかけられる時間はごくわずかであり、求人原稿の作成や媒体選定、応募者対応までを社内で完結するのは現実的に困難です。
採用支援会社を活用することで、そうした採用実務を専門家に委ねることができ、限られた人員でも効率的な採用活動を展開できます。また、支援会社は過去の成功パターンや業界特有の傾向を把握しており、スピーディかつ的確な対応が可能です。結果として、採用にかかる時間と労力を大幅に削減し、現場は本来注力すべきケア業務や組織マネジメントに集中することができるようになります。
2. 求人の訴求力が飛躍的に向上する
求人情報は単なる条件提示の場ではなく、「職場の魅力をどう伝えるか」が問われるマーケティング施策の一つです。採用支援会社は、求職者の関心を引き、行動に移させる表現技術に長けています。たとえば、求人原稿では給与・勤務時間だけでなく、職場の雰囲気、スタッフ同士の関係性、日々のやりがいといった“感情に訴える”情報も盛り込むことで、応募率が大きく変わってきます。
また、ビジュアル設計や構成にも一貫した戦略性を持たせることにより、読みやすく印象に残る求人を作成することが可能です。結果として、より自社にマッチした人材からの応募が集まりやすくなり、採用の質も自然と向上していきます。
専門家の手によって設計された求人情報は、単に「条件を伝える」だけでなく、「その職場で働く魅力」や「働く人のリアルな声」を効果的に伝える力を持ちます。文章表現、ビジュアル、ストーリー構成においても一貫したコンセプト設計が可能となり、結果として応募者の質と量を高めることができます。
3. 採用戦略を客観的に見直せる
日々の訪問や診療に追われるなかで、自社の採用活動を客観的に振り返る機会は少ないのが実情です。採用支援会社を活用することで、第三者の視点から自社の採用活動を診断してもらうことができます。
たとえば、「なぜ応募が来ないのか」「なぜ定着しないのか」といった根本課題を言語化し、具体的な改善策を提案してくれるのは外部ならではの価値です。加えて、競合他社の動向や市場の変化も加味したうえで、トレンドを押さえた採用戦略の立案が可能になります。結果として、単なる小手先の改善にとどまらず、中長期的に効果を発揮する“戦略的な採用活動”へと進化させることができます。
採用支援会社は外部の視点を持っているため、これまで気づかなかった採用上のボトルネックや改善ポイントを明確にすることが可能です。「なぜ応募が来ないのか」「辞退が多い理由は何か」などを分析し、改善策を提案してくれる存在としても非常に価値があります。
4. 必要なときに利用でき、経営リスクが少ない
採用支援会社の活用は、常に長期契約を結ぶ必要はありません。採用ニーズが一時的に高まる時期、たとえば新規出店や分院の立ち上げでの人員補充が急務のタイミングなど、スポット的に活用できるのも大きな利点です。
これにより、自社内に採用担当者を増やすなどの固定費を抱えることなく、必要なときに必要な分だけ外部リソースを投入することが可能になります。さらに、採用活動に関するPDCAサイクルを回す際も、支援会社がそのプロセスに加わってくれることで、効果測定や改善提案がスムーズに進みます。結果として、経営資源を効率よく活用しながら、無駄なコストや人的負担を最小限に抑えることができるのです。
優れた採用支援会社は、人材業界の知識に加えてマーケティング領域の視点を持ち合わせています。求職者の行動心理を理解したうえで、検索されやすいキーワードの選定、競合との差別化、SNS運用による接点づくりなど、応募につながる動線設計を行うことが可能です。こうした施策により、自社だけでは到達できなかった求職者層にアプローチできる点は大きなメリットです。
採用支援会社を利用する際の注意点とデメリット
一方で、採用支援会社にすべてを任せきりにすることにはリスクもあります。以下のような注意点やデメリットも理解したうえで、活用することが重要です。
1.ミスマッチのリスク
2.自分達の採用力が育たない
3.費用対効果が不明瞭になるケースも
1. ミスマッチのリスク
採用支援会社を利用する際に最も注意すべき点のひとつが、ミスマッチによる早期離職のリスクです。特に医療・歯科業界は、職場ごとの文化や求められる姿勢が非常に多様であり、それらを正確に把握できていない支援会社に依頼すると、表面的な条件だけで人材像を設計してしまいがちです。
たとえば「看護師」という職種でも、訪問看護と病棟勤務では必要とされるスキルや考え方が大きく異なります。そうした違いを無視して、形式的な求人情報だけをもとに人材を集めてしまうと、入職後に現場とのギャップを感じてしまい、結果的に早期離職や人間関係の不和を引き起こすリスクが高まります。そのため、業界特有の文脈を正しく理解し、職場ごとの「求める人材像」を丁寧にヒアリングできる支援会社であるかを見極めることが非常に重要です。
業界理解が浅い支援会社を選んでしまうと、職場の実情に合わない人材像が描かれたり、求職者に誤解を与える表現になったりする可能性があります。結果としてミスマッチが起こり、かえって早期離職を招いてしまうこともあります。
2. 自社の採用力が育たない
採用支援会社に頼りすぎると、自社内に採用に関する知見やノウハウが蓄積されにくくなるリスクがあります。特に、すべての工程を外注してしまうと、「自社はなぜこの原稿で募集をかけるのか」「どういった応募者が自社に合うのか」といった基本的な問いに答えられない状態が続いてしまいます。
採用は本来、組織の成長戦略と密接に関わる重要な経営課題であり、社内で考える力を持つことが必要です。支援会社にすべて任せるのではなく、「社内でどう改善できるか」をともに考えてくれるスタンスの支援会社と付き合うことで、自社の採用力も段階的に育っていきます。つまり、支援を受けながら“内製化の芽”を育てていく姿勢が大切なのです。
支援会社に依存しすぎると、社内に採用ノウハウが蓄積されず、同じ問題が繰り返されることがあります。採用活動のすべてを丸投げするのではなく、支援会社と一緒に「自社としての採用力を育てる」スタンスが大切です。
3. 費用対効果が不明確になるケースも
採用支援に一定のコストをかけるからには、「どのような成果を期待するか」「どこまでが支援会社の責任範囲か」を明確にしておく必要があります。曖昧な契約や目的設定のまま依頼をスタートすると、あとから「思ったほど効果がなかった」「何を評価すればよいのかわからない」といった状態になりがちです。
特に医療・歯科業界の採用は短期間での成果が見えにくく、定着や現場満足度などの“見えにくい指標”も成果に含まれるため、数値化が難しい場面もあります。そのため、KPI(重要業績評価指標)を事前に設定し、定期的に効果検証の機会を持つことで、費用対効果を可視化しやすくなります。適切なマイルストーン設計と継続的な振り返りが、成功する外部委託の鍵となります。
明確な目標設定や成果指標がないまま支援を受けると、投資に対する成果が見えにくくなります。支援会社に依頼する際は、KPIや期待する成果を明確にし、途中経過での振り返りを行うことが必要です。
HOAPの採用支援について
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