「求人を出しているのに応募がまったくない」
「応募者が来ても定着せず、すぐに辞退される」
「媒体を変えても応募数や反応に変化がない」
──そんな採用の悩みを抱える医療介護の現場は、今や珍しくありません。
実は、採用がうまくいかない現場には、共通する3つのパターンが存在しています。
この記事では、採用が“詰んでしまう”原因を構造的に整理し、そこからどう脱却できるかをお伝えします。
採用が“詰む”3大パターン
パターン①:「即戦力採用」にこだわりすぎる
最も多い失敗パターンのひとつが、「経験者しか採用しない」という前提で活動してしまうケースです。
「現場を回すには即戦力が必要だから」という理由で、
- 訪問看護や在宅介護の経験者に絞る
- 病院勤務からすぐにシフトできる人を探す
といった採用をしている法人は少なくありません。しかし、実際には訪問未経験者が圧倒的に多く、経験者はどこでも争奪戦。市場全体の母数が限られているため、最初から極めて狭いフィールドで戦っている状態になります。
経験者採用に固執することは、例えるなら崖に向かって全力で走るようなもの。採用活動を持続可能にするには、「育成前提」の採用設計が必要です。
「未経験でも成長できる環境」を用意し、受け入れる体制を整えることが、これからの採用成功のカギになります。
パターン②:「求人票だけ」で採用できると思っている
二つ目の落とし穴は、「求人票を出せば応募が来るはず」という思い込みです。
今の求職者は、単なる条件比較ではなく、
- この職場で自分は働けそうか
- 信頼できる環境か
を重視して情報を見極めています。
にもかかわらず、
・テンプレートを流用した無機質な求人票
・どのステーション・クリニックとも変わらない似た内容
・伝えたいことだけを一方的に並べた文章
──このような求人では、興味すら持ってもらえないのが現実です。
求職者に響かせるためには、
💡求職者視点での課題感に寄り添った訴求
💡実際に働く人のリアルなエピソード
💡自分ごと化できる「未来のイメージ」
こうした要素を盛り込んだ、感情に届く設計が欠かせません。
求人票はあくまで「入口」。
それ単体ではなく、広報やSNSを活用した採用ブランディングとセットで設計することが重要です。
パターン③:「採用業務を兼務している」構造
三つ目の問題は、「採用業務を兼務している」ことです。多くの訪問看護ステーションでは経営者が、歯科クリニックでは院長が採用を兼務していることが多いです。
よく見られるのは、
・応募対応に数日かかってしまう
・面接の評価があいまいな感覚頼り
・「来てくれるなら誰でもいい」という妥協モード
──といった状況です。
しかし採用は、設計と仕組み化が不可欠な業務です。感覚任せや空き時間対応では、優秀な人材は取り逃がしてしまいます。
を事前にきちんと決め、流れるような応募者対応を設計しておく必要があります。
さらに、面接の設計も重要です。
「どんな価値観を持った人と働きたいか」を明確にし、単なるスキルチェックではなく、カルチャーフィットを重視した評価基準を設けましょう。
採用担当を専任で設置できない場合でも、最低限、役割分担とプロセスの可視化は欠かせません。
「応募がない」のは仕組みの問題
採用がうまくいかない理由を、「たまたま今年は応募が少ない」や「うちは人気がないから」と片付けていませんか?実際には、運や人気の問題ではなく、構造の問題であるケースがほとんどです。求職者の動きや心理は確実に変化しています。
この変化に合わせて、採用活動の設計そのものを見直さなければ、状況は変わりません。
大切なのは、
・「どのような人材を採りたいのか」の再定義(ペルソナの設定)
・「どのような情報をどう伝えるか」の設計(自社の魅力の言語化)
・「誰がどの役割を担うか」の分担(採用業務の分業)
この3つを、改めて丁寧に設計し直すことです。
採用を「打ち上げ花火」にせず、「持続可能な仕組み」に変える視点が求められています。
採用は「出す」ものではなく「設計する」もの
この記事で紹介した通り、医療介護業界で採用が“詰む”原因は3つのパターンに集約できます。
💡経験者だけにこだわる
💡求人票だけに頼る
💡現場任せにする
しかし、これらの問題の本質はすべて、「採用設計がなされていない」ことにあります。これからの時代、採用は単に求人を出すだけでは成立しません。
「誰に、どんな価値を届け、どう選ばれる組織をつくるか」を設計するフェーズに入っています。
もし今、「応募がない」「定着しない」「採用に疲れた」と感じているなら、それは努力不足ではなく、仕組みを見直すチャンスです。
まだ間に合います。
まずは、自分たちの採用活動がどのパターンに当てはまるかを冷静に振り返り、小さな一歩から改善を始めてみませんか?