応募が来ない訪問看護の採用サイトから脱却する4つの改善策

パソコンを見て悩む訪問看護師

訪問看護ステーションの採用活動において、「採用サイトを作ったのに応募が来ない」という声は決して珍しくありません。制度や働き方、スタッフの紹介、ステーションの理念——時間と手間をかけて採用ページを整えたはずなのに、反応はゼロ。そんな状態に直面している方も多いのではないでしょうか。

採用サイトは、求人票では伝えきれない「雰囲気」や「価値観」を届ける手段として活用されてきました。しかし、ただ作るだけでは意味がありません。むしろ多くの場合、「なぜ応募が来ないのか」の原因は、サイトの内容そのものではなく、“届いていない”こと、“伝わっていない”ことにあります。

特に訪問看護は、働く環境や求められるスキル、求職者が抱く不安が多様である分、「この職場でなら自分も働けそう」と想像してもらうための工夫が不可欠です。表面的な条件や制度の説明だけでは、求職者の心を動かすことはできません。重要なのは、『応募したい』『話を聞いてみたい』と思えるだけの共感と信頼をどう構築するかです。

本記事では、「応募が来ない採用サイト」から脱却するために、訪問看護の採用現場でよく見落とされがちな4つの視点を取り上げます。サイトそのものの設計だけでなく、届け方・見せ方・伝え方における改善のヒントを整理し、明日からの実践につながる具体的な手がかりを提示します。

目次

採用サイトを作っただけでは応募が来ない原因

見られていない採用サイトは存在しないのと同じ

「採用サイトを作ったのに応募が来ない」という悩みの多くは、実はサイトが見られていないことが根本原因になっています。つまり、応募が来ないのではなく、「誰にも届いていない」状態です。


訪問看護ステーションの採用サイトは、大手病院や総合法人のように自然流入が見込めるケースはほとんどありません。だからこそ、検索で探してもらう・SNSで興味を持ってもらう・求人媒体から誘導するなど、『見てもらうための導線』がなければ、作っただけで終わってしまうのです。

「検索される前提」が成立していない

採用サイトを公開する際、「事業所名+採用」「訪問看護+地域名」で検索されることを想定しているケースは少なくありません。

しかし、求職者の多くは「訪問看護 求人 ○○市」「訪問看護 働きやすい」「訪問看護 未経験OK」など、かなり感覚的なキーワードで検索しています。

つまり、採用サイトの内容がどれほど充実していても、そもそも検索に引っかからなければ存在しないのと同じです。Google検索で表示されるページの中に、あなたのステーションが含まれていない限り、求職者はその存在に気づくことすらできません。

SNSや求人媒体との「橋渡し」がない

SNS(InstagramやX、Youtube等)や各種求人媒体と採用サイトとの動線が断絶しているケースもよくあります。たとえばInstagramの投稿で事業所の日常を紹介していても、プロフィールに採用サイトのURLがなかったり、投稿内で採用情報の導線が設けられていなかったりすると、せっかくの興味が応募につながらないのです。


求人票にURLを貼っていたとしても、「クリックした先で何が見られるのか」が具体的に伝わっていなければ、求職者は次の一歩を踏み出しません。

「応募フォームではなく、まずは事業所の雰囲気を見たい」という潜在層に向けた配慮が欠けている場合が多く見受けられます。

求職者は「まず見る」より「気になったら見る」

求職者の行動は、受動的です。たまたま見かけた求人、紹介された投稿、友人からのシェアなど、そのときに「この職場ちょっと気になる」と思ってもらえるかどうかが第一歩です。その段階で採用サイトの存在が示されていなければ、応募機会は失われます。


つまり、採用サイトの公開は“スタート地点”ではなく、“届ける仕組み”がセットになって初めて機能します。届ける先は、既存スタッフの紹介先、SNSフォロワー、他媒体の閲覧者など、それぞれに向けた動線設計が必要なのです。

「自分たちのステーションを知ってもらう」ためにやるべきこと

では、応募につながる『見られる採用サイト』にするために、何をすればよいのでしょうか。次の3点が基本です。

・SNS(Instagram・LINE公式)に定期的に採用導線を設ける
・求人票の中に「このサイトで詳しい情報が見られる」ことを明記する
・Googleビジネスプロフィール、法人サイトなど目立つ場所にURLを配置する

特に訪問看護は訪問未経験から始める人が多いため、「不安を払拭してから応募したい」と考える人が多く、応募に至るまでの接触回数が他業種より多くなります。だからこそ、採用サイトはただ“作る”のではなく、“何度でも見られる機会”を構築して初めて機能するのです。

訪問看護の採用サイトが「応募ゼロ」になる理由:求職者にとって自分ごとになっていない

「伝えたいこと」だけで作っていないか?

訪問看護の採用サイトを見直す際、真っ先に確認すべき点があります。それは、「この内容は、求職者が知りたいことになっているか」という視点です。

多くの採用サイトは、理念、制度、代表メッセージ、写真といった伝えたい情報を中心に構成されています。しかし、見る側が求めているのは、「この職場で自分が働いたら、どんな日常が待っているのか」「今の不安はここでなら解消されそうか」という『自分ごとの情報』です。発信側の意図と読み手の関心にズレがあると、いくら情報があっても応募にはつながりません。

条件や制度の羅列では求職者の「感情」が動かない

例えば、

「直行直帰OK」
「育児との両立支援制度あり」
「研修充実」

といった内容は、確かに魅力的な条件です。しかし、それが「どう助かったのか」「誰がどう感じたのか」まで踏み込んでいなければ、読み手には響きません。

求職者が知りたいのは、制度そのものではなく、「その制度によって安心できた実感」「生活や働き方にどう影響したか」といったスタッフのリアルな声です。単なる情報ではなく、感情が動く描写こそが、自分ごと化の起点になります。

未経験者やブランク層の不安が言語化されていない

訪問看護は病院とは異なり、基本的に看護師が単独で利用者宅を訪問します。この“ひとりで行く”ことへの不安やプレッシャーを抱える人は多く、そこにどう向き合っているかが応募の判断材料になります。

にもかかわらず、採用サイトの多くは「未経験歓迎」「丁寧にフォローします」といった抽象的な表現にとどまりがちです。これでは、不安の本質に届きません。

たとえば次のような表現があると、求職者にとっての解像度が格段に上がります。

・「最初の1ヶ月は、必ずペアで同行します」
・「私は訪問未経験で在宅へ。インターホンを押すときの緊張は、今でも覚えています」
・「同行中に利用者さんと信頼関係を築くプロセスも見てもらえます」

こうした“具体的な場面や気持ち”を描くことが、読み手に「ここなら自分でもやれそう」と思わせるきっかけになります。

「誰のための採用サイトか」を再確認する

採用サイトは、事業所のブランディングツールではありません。目的は『応募につながること』です。つまり、見た人が「自分も働きたい」と思えるかどうかが評価基準です。

にもかかわらず、「法人としての想いを発信する場」として作られているサイトが多く存在します。理念やビジョンはもちろん重要ですが、それを語るだけで応募が来ることはありません。むしろ、それを『どんな職場で、どんな人と、どんな時間を過ごすのか』という文脈で語る必要があります。

求職者にとって「自分がここで働く姿が想像できるかどうか」。これが自分ごと化の最大のポイントです。

訪問看護の採用サイトに応募が来ない心理的な壁

応募=即エントリーではない

訪問看護の採用サイトを見に来た求職者が、すぐに応募するとは限りません。むしろ「気になってはいるけど、いきなり応募はハードルが高い」と感じている人が大多数です。

それにもかかわらず、多くの採用サイトは「最後にエントリーフォームのリンクがあるだけ」という構成になっています。

この状態では、いくら職場の雰囲気が良く伝わっていても、求職者は次の一歩を踏み出せません。なぜなら、応募という行動には「失敗したくない」「不安を解消したい」という心理的なブレーキが常について回るからです。

「話を聞いてみたい」段階の求職者を逃している

実際、訪問看護という職種には多くの不安要素があります。たとえば、未経験で本当に一人で訪問できるのか、病院勤務との違いについていけるのか、働き方に融通は利くのか。こうした情報を知りたいと思ってサイトを見に来ているのに、「応募はこちら」や「詳しくはお問い合わせください」しかないと、「まだ応募するほど決めてない」と感じて離脱してしまいます。

このような『関心層』に向けて、「話だけ聞いてみる」「まずは見学する」といった応募未満の選択肢を提示しておくことが極めて重要です。接点が一段階あることで、「とりあえず話してみようかな」と思える心理的ハードルが大きく下がります。

導線の有無は「意欲」ではなく「配慮」の差

応募フォームの配置や導線の工夫は、応募者の意欲を測るためのものではありません。むしろ、どれだけ不安や迷いに寄り添えるかという「求人者側の配慮」が問われている領域です。

LINEでの相談受付、見学申し込みボタン、カジュアル面談の案内など、あらゆる方法でまず話せる導線を用意しているステーションと、ただフォームだけを設置しているステーションとでは、応募率に大きな差が生まれます。

さらに言えば、スマートフォンで閲覧している求職者も多いため、ページ内に複数の導線を配置し、「いつでも押せる」状態を作っておくことも効果的です。一番下まで読まないと応募できない構成では、途中で離脱されてしまう可能性が高くなります。

「応募=決断」ではなく「応募=接点」という発想へ

訪問看護の採用において、「応募してもらうこと」は最終決定ではなく、会話のきっかけであるべきです。応募後に面談や見学を行い、互いの理解を深めていくプロセスを重視しているなら、そのスタンスを採用サイトにも反映させるべきです。

たとえば次のような表現があれば、心理的な壁を下げることができます。

・「いきなりの応募は不安な方へ。まずは見学だけでも歓迎です」
・「LINEで気軽に相談できます。聞きたいことがあるだけでも大丈夫です」
・「スタッフとのカジュアル面談、毎週実施中」

このような一言があるだけで、応募ボタンのクリック率は変わります。大切なのは、一歩踏み出す人の視点に立つことです。

訪問看護の採用サイトは「伝える」より「伝わる」構成へ

求人条件の説明だけでは応募は生まれない

訪問看護ステーションの採用サイトでよく見かけるのが、「勤務条件」「福利厚生」「研修制度」などの情報が丁寧に記載されたページです。もちろん、これらは必要な情報です。しかし、それだけでは応募に結びつきません。

なぜなら、求職者が本当に知りたいのは、「その制度があることで、実際にどんな働き方ができているのか」「その制度があって、どんな安心感があったのか」といったリアルな情報だからです。制度の存在を伝えることと、その制度がもたらす効果を伝えることは、まったく別物です。

共感が生まれるのはスタッフの「エピソード」から

求職者がもっとも関心を寄せるのは、そこに自分の未来を投影できるかどうかです。そして、それを実感させるのがスタッフのリアルなエピソードです。

たとえば以下のような具体的な語り口があると、読み手は自然と自分を重ねて読み進めます。

・「子どもが急に熱を出したとき、管理者が『今日は直帰でいいよ』とすぐに対応してくれた」
・「最初は全く自信がなかったけど、同行訪問を何度も重ねて、“この人なら大丈夫”と言われたとき、やっと安心できた」
・「管理者になった今でも、毎週一度は自分の不安を話せるミーティングがあって、ずっと見てもらえている感じがする」

こうしたストーリーは、「伝えたい魅力」を押し付けるのではなく、『自然に伝わる魅力』として、読み手の心に残ります。

「誰が語っているか」が信頼感を左右する

採用ページに代表者のメッセージが載っていることは多いですが、それだけでは現場のリアリティが伝わりきりません。求職者が知りたいのは、「実際に働いているスタッフがどう感じているか」です。

スタッフ一人ひとりの言葉には、法人の広告的なメッセージよりもはるかに強い説得力があります。とくに、訪問未経験だった人の視点、転職してきた人の変化、子育て中スタッフの一日など、実体験に基づいた情報は「自分もそうなれるかもしれない」と思わせる力を持っています。

だからこそ、次のような要素は必須です。

・スタッフの一人称で語られるインタビュー(短くてもよい)
・転職前の不安やギャップを含んだ体験談
・「なぜこの職場を選んだのか」「今どんな風に働いているのか」

こうした情報があることで、読み手にとっての距離が縮まり、応募への心理的ハードルが下がります。

採用サイト=体験の疑似再現ツール

採用サイトの本来の役割は、単なる情報提供ではありません。求職者がその職場で働くイメージを具体的に描ける疑似体験の場であるべきです。制度や理念はその一部であり、それらが「どのような日常や感情を生んでいるのか」をエピソードで伝えることが必要です。

そのためには、写真・動画・文章のすべてを通じて、「リアルさ」と「共感」を提供することが求められます。たとえば、スタッフの一日を写真とセリフで紹介したり、短い動画で訪問の流れを見せたりするだけでも、伝わり方は大きく変わります。

訪問看護の採用サイトを変える4つの行動

「改善策」ではなく「明日からできる行動」に落とし込む

ここまで述べてきたように、訪問看護の採用サイトが応募につながらない理由は、ただ存在していないのではなく、「届いていない」「伝わっていない」状態にあります。とはいえ、採用サイトの全面リニューアルや大規模な改修をすぐに行うのは難しいという声もあるでしょう。

そこで本章では、特別なツールや制作予算がなくても取り組める「明日から始められる4つの行動」を提示します。小さな改善でも、確実に応募につながる土壌はつくれます。

1. ターゲットを再設定し、「誰に見てほしいか」を明文化する

採用サイトを見直す第一歩は、「誰に向けた内容か」を具体的に定義し直すことです。
たとえば以下のように、想定する求職者像を明文化することで、文章・写真・構成のすべてに一貫性が生まれます。

・訪問看護未経験の30代、子育て中の正看護師
・病院勤務に疲れて「一人ひとりと向き合いたい」と感じている人
・夜勤から離れたい、日中勤務を望むワークライフバランス重視層

こうしたターゲットを文章化し、チームで共有するだけでも、訴求すべき内容が変わってきます。

2. 「応募前の接点」をサイト上に明示する

応募までの心理的ハードルを下げるには、「応募未満」の行動を歓迎することが効果的です。以下のような軽い導線を明示し、バナーやボタンで目に留まりやすく配置しましょう。

・LINEでの個別相談(よくある質問に自動応答する仕組みも◎)
・オンラインまたは対面でのカジュアル面談
・スタッフとの1対1トーク・OB訪問的な仕組み
・見学のみの申し込みフォームの設置

特にLINEを導入している場合、「気になることがあれば、まずはLINEでご連絡ください」と伝えるだけで、接点数は増加します。

3. スタッフのリアルな心情をサイト内に設ける

「制度は整っている」と書かれていても、「そこで働く人がどう感じているか」が見えなければ、求職者の共感は得られません。重要なのは、「人の感情」が伝わるコンテンツを採用サイトに組み込むことです。

写真やプロフィールではなくても構いません。1〜2文の短い「リアルな気持ち」を、テキストで掲載するだけでも十分効果があります。

・「初めて訪問に出た日は、緊張で前の日眠れませんでした」
・「子育てとの両立が不安だったけど、“無理しなくていいよ”と言われて救われた」
・「前職では感じなかった“患者さんとのつながり”がここにはあると感じました」

こうした声を、トップページだけでなく、制度紹介の合間や募集要項の下などにも自然に配置することで、「この職場には感情がある」と読み手に印象づけられます。特に訪問看護という『人の生活に深く関わる仕事』において、働く側の心情が伝わることは、応募の意思決定に直結します。

4. SNSと求人媒体から採用サイトへの導線を「繰り返し」設ける

SNSや求人票は一過性のメディアです。だからこそ「1回貼ったからOK」ではなく、繰り返し誘導を設計することが大切です。

〇 Instagramの投稿で週に1回、スタッフの想いなどを発信する
〇 ストーリーズハイライトに「採用Q&A」を設置し、そこからリンク誘導
〇 各種求人媒体に「もっと知りたい方は採用サイトへ」と記載
〇 LINE登録時に自動メッセージで採用サイトのリンクを送る

「気になる→クリック→信頼する→応募する」というプロセスは、何度も接点があるからこそ成立します。

小さな工夫が応募の「きっかけ」を生む

採用は“タイミング”と“安心感”が合致したときに動きます。訪問看護という職種は、働くイメージや不安の大きさゆえに、“きっかけ”づくりが非常に重要です。

今回ご紹介した4つの行動は、いずれも大きな投資を必要としない施策ばかりです。しかし、これらを積み重ねることで、「応募ゼロ」の状態から確実に脱却する道筋が見えてきます。


監修者:権守 泰純(Yasuyoshi Gonmori)

株式会社HOAP代表取締役。2022年に創業し、医療・介護業界に特化した採用支援事業を展開。現在は訪問看護・訪問診療訪問歯科など在宅分野からクリニックなど、業界特化で採用支援事業を展開。


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