「人間関係がいい職場」が新人を苦しめる本当の理由とは?

歯科医院で仲間外れにされている新人歯科衛生士

「うちは人間関係がいいから、新人もすぐ馴染めると思う」

そう信じている医療・歯科従事者の方は多いかもしれません。

実際、訪問看護や歯科クリニックの求人情報では、「職場の雰囲気の良さ」「スタッフ同士の仲の良さ」がしばしばアピールポイントとして使われています。確かに、ギスギスした職場よりも、穏やかで協力的な空気がある環境は魅力的に映ります。

けれども現場では、「なんとなく合わなかった」「気づいたら来なくなっていた」といった形で、早期に職場を離れていく新人の存在が後を絶ちません。しかも、その多くは明確なトラブルがあるわけでもなく、本人から特に不満が語られることもなく、静かに退職していく──そうした「声なき離職」が繰り返されています。

その背景には、「人間関係がいい」という職場が、新人にとってはかえって壁になっている可能性があります。仲の良さで築かれた信頼関係が、無意識のうちに排他性や同調圧力を生んでしまい、新しい人にとっては「入りにくさ」や「聞きづらさ」として現れてしまうのです。

本記事では、訪問看護や歯科医院といった医療現場を対象に、「人間関係の良さ」が新人にどのような影響を与えているのか、その裏側にある職場文化の実態を掘り下げていきます。加えて、新人が安心して働ける環境をつくるために必要な視点と、明日から現場で実践できる行動についても詳しく解説します。

目次

なぜ「仲がいい職場」が新人にとって居心地が悪くなるのか?

「うちは人間関係がいい」──その安心感が逆に“壁”になることがある

訪問看護や歯科医院など、多職種が連携する医療現場では、採用活動において「人間関係の良さ」や「スタッフの仲の良さ」が強調されることが少なくありません。実際、面接の際に「うちはとにかく雰囲気が良いんですよ」と語る現場責任者も多く、求職者もまた「人間関係のストレスがない職場」を理想として掲げがちです。

しかしながら現場では、「特に問題があったわけではないのに、数ヶ月で辞めてしまった」といった「声なき離職」が後を絶ちません。その理由の一つとして注目すべきなのが、「人間関係の良さ」そのものがもたらす見えづらい圧力です。

新人にとって、すでに関係性が出来上がっている職場に入ることは、思った以上に心理的ハードルが高くなります。とくに医療の現場では、長期間働いているスタッフが多く、その中で築かれた信頼関係は「完成された輪」として機能してしまいがちです。そこに途中から加わる新人は、意図せず「外の人」という位置づけになりやすくなります。

新人が抱く「居心地の悪さ」の正体

以下は、実際に新人が感じやすいシーンです。

・「いつ・どこで・誰に質問すればいいか分からない」
・「LINEグループの雑談があるけど、自分だけ発言しづらい」
・「昼休憩中、話しかけるタイミングを見失って気を遣ってしまう」

これらは、明確な拒絶があるわけではありません。しかし、「自分はこの場に馴染めていない」「何となく疎外感がある」といった感覚を生み出し、それが蓄積することで居心地の悪さへとつながっていきます。

特に訪問看護の場合、スタッフは一人で訪問に出る時間が長く、日常的な雑談やちょっとした相談のタイミングが極めて限られています。一方、歯科医院では物理的には同じ空間にいながらも、診療の合間に話しかけること自体が難しく、結果として「空気を乱さないように」と過剰に配慮してしまう場面が生まれます。

このように、職場環境や業務スタイルは異なっていても、「気軽に話せる場面が少ない」「沈黙や雑談に対する心理的ハードルが高い」といった点で、訪問看護も歯科医院も共通の課題を抱えているのです。

暗黙のルールが「見えない壁」になる

さらに、新人がつまずきやすいのが“暗黙のルール”の存在です。

たとえば、

・報連相のタイミングはどうするのが正解か?報連相のタイミングはどうするのが正解か?
・院長への声かけは診療後が良いのか?
・休憩は順番?自由?誰かが行ったら次?

こうしたルールは、すでに働いているメンバーにとっては当たり前でも、新人にとっては「説明されないと分からないことばかり」です。そしてそれを「聞くのが申し訳ない」と思わせてしまう空気があると、新人はさらに萎縮し、結果として「ここには自分の居場所がない」と感じやすくなります。

「完成された輪」に入りづらい雰囲気が定着を妨げている

人間関係が良好であることは、たしかに職場の魅力の一つです。しかし、今いる人にとっての「居心地の良さ」が、結果として「新しい人を迎え入れにくい関係性」になってしまっているとしたら、それは定着を妨げる大きな要因です。

大切なのは、「既存の関係性が心地よいか」ではなく、「これから入ってくる人にとって、関係性が開かれているかどうか」。この視点が、今後の医療・歯科現場における採用と定着の鍵を握っています。

無自覚な「同調圧力」が、新人を黙って追い出していないか?

表面的な「歓迎ムード」では、本当の安心にはつながらない

訪問看護や歯科医院のように、日常的に多職種が連携する職場では、新人が早く馴染めるようにと「質問してね」「困ったら声かけて」といったフレーズが頻繁に交わされます。それ自体は歓迎すべき対応ですし、多くの職場でその努力がなされているのは事実です。

しかしながら、こうした「言葉としての受け入れ」は、実際に新人が「安心して行動できる」こととは一致しません。現場の温度感や人の動き方がそれに伴っていなければ、むしろ逆に新人は「言葉と現実のギャップ」に戸惑いを感じやすくなります。

たとえば、

・「質問していいよ」と言われても、誰も手を止めてくれない
・「気にせず聞いてね」と言われた直後に忙しそうな表情をされて話しかけづらくなる
・自分のタイミングで話しかけたら、会話の流れが止まってしまった

こうした経験は、「表面上は歓迎されているはずなのに、どこか話しかけづらい」「本当に聞いていいのか不安になる」といった遠慮を引き起こし、新人が内心で抱える孤独感や不安を増幅させてしまいます。

新人が抱える自制心と察する圧力

加えて、新人自身にも気を遣いすぎてしまう傾向があります。

・「今は忙しそうだから声をかけてはいけないかも」
・「こんな簡単なことを聞いていいのだろうか」
・「自分のせいで流れを止めたらどうしよう」

こうした内的な自制は、「新人だからこそ質問して当然」という前提を、自分の中で否定する動きにつながっていきます。とくに医療現場では、感情を表に出すことを控え、周囲との協調を重んじる文化が根付いていることも多く、新人ほど「迷惑をかけてはいけない」という思考に陥りやすくなる傾向があります。

この結果、表面上は「問題なくやれている」ように見えても、実際には疑問を抱えたまま、誰にも聞けず、どこか孤立した感覚の中で業務を続けている──こうした「静かな孤立」が生まれやすいのです。

美徳としての「空気を読む力」が新人を排除していないか?

訪問看護や歯科医院に限らず、長く続いている職場ほど、スタッフの動きは「言葉ではなく、なんとなく決まっているルール」で回る傾向が強くなります。たとえば「誰がどこをサポートするか」や「どのタイミングで話しかけるか」などが、明文化されていない『暗黙の共通認識』で処理されることが多くなります。

こうした環境では、「察して動ける人」「黙って周囲に合わせられる人」が無意識に高く評価され、「わざわざ聞く」「流れを止める」といった行動は敬遠されがちです。これは新人にとって非常に高いハードルとなり、「聞きたいけど、黙っていよう」「みんなと同じように動こう」と、自分の行動を制限するようになります。

しかし、その結果生まれるのは「何も聞けない」「聞いたら迷惑かも」「質問の仕方が分からない」という状態です。そしてこの違和感が言葉にならないまま蓄積され、やがて「やっぱり自分には合わなかった」という声なき退職につながってしまうのです。

「心理的安全性」は、言葉ではなく日々の関わりでつくられる

本来、新人が安心して働ける職場とは、「分からないことを素直に聞ける」「失敗をしても責められない」と感じられる「心理的安全性」が備わっている場です。そしてそれは、「質問してね」という言葉だけでは成立しません。

重要なのは、次のような日々の関わりです。

・誰かが必ず時間を取ってくれる
・初歩的な質問にも感謝や共感が返ってくる
・ミスがあった際に「なぜそうなったか」を一緒に振り返る雰囲気がある

こうした行動が蓄積されてはじめて、「ここでは安心して働ける」「誰かが見ていてくれる」という感覚が生まれます。逆に言えば、行動の裏付けがなければ、どれだけ言葉で「安心していい」と伝えても、新人には響かないのです。


本当に「人間関係が良い職場」とは

人間関係が良い職場とは、既存メンバー同士の心地よさだけを指すのではなく、「新しく入った人が自然に溶け込める関係性」を含んでいる必要があります。

「新人が質問できないのは本人の積極性の問題」と片付けるのではなく、「私たちの職場は、行動で新人を迎え入れているか」と問い直すこと。それが、定着率を改善するための第一歩です。

「「いい関係性」ではなく「迎え入れる関係性」に変えるには?

「居心地がいい職場」=「新人にとって優しい職場」とは限らない

訪問看護や歯科医院では、スタッフ同士の信頼関係や、気心の知れた関係性が職場の強みとなっているケースが少なくありません。そのような職場では、「みんなで支え合っている」「安心して働けている」という実感を既存メンバーが持っており、自然と「この環境なら、新人もすぐに馴染めるだろう」と考えがちです。

しかし、それは本当に新人にとっても「安心できる関係性」になっているのでしょうか。

大切なのは、「今いる人が心地よく働けていること」ではなく、「これから入ってくる人が、最初から安心して過ごせる環境であること」です。つまり、職場としての成熟度ではなく、「迎え入れる準備ができているかどうか」に目を向けなければなりません。

「迎え入れる」ことは、感覚ではなく仕組みで行うもの

新人の定着率を高めるうえで重要なのは、「なんとなくみんなでフォローする」ではなく、「誰が・何を・いつ」行うかをあらかじめ決めておくことです。

たとえば以下のような流れがあると、新人にとって「安心して働ける職場」という印象につながりやすくなります。

入職初日の流れを具体化する

・出勤から業務終了までの時間帯で、誰が案内・対応をするか明確にする
・初対面となるスタッフとの顔合わせを意識してスケジューリングする
・「この人に何でも聞いてね」と伝える役割担当者を設ける

このような流れを「分刻みのスケジュール」ではなく、「午前/午後/終了前」といった3つのフェーズに分けて準備しておくと、現場側も無理なく対応できます。

初週フォロー体制の整備

・日報やチャットでの1日1回の声かけ
・「今日なにか困ったことなかった?」という気持ちベースのヒアリング
・あえて雑談ベースでのコミュニケーションを意図的に設ける

とくに業務の報告だけでなく、「雰囲気」「気まずさ」「話しかけやすさ」など、感情にフォーカスしたフォローがあることで、新人の安心感は格段に高まります。

定着する人材の共通点は「安心して失敗できた人」

人が職場に根付くために必要なのは、最初からうまくいくことではありません。むしろ「失敗しても大丈夫だった」「分からないままでも許された」「その都度、誰かが教えてくれた」という経験こそが、新人の心理的安全性を育てる要素になります。

そのためには、以下のような観点がポイントになります。

・失敗や質問に対する周囲の反応が柔らかいか
・教える側が「こうすればいいよ」と先回りしすぎないか
・質問の場面が評価される時間になっていないか

とくに医療現場では、「患者に迷惑がかかってはいけない」「安全第一で動くべきだ」という意識が強く、どうしても新人の行動に対して厳しさが求められがちです。しかし、それが行き過ぎると、「間違えられない空気」「完璧を求められる空気」が支配的になり、結果的に新人の離脱を早めてしまいます。

「迎え入れの仕組み」が文化になる職場へ

定着率の高い職場には、「人を迎え入れる仕組み」が文化として根付いています。

・初日から誰かが必ず案内する
・暗黙知を言語化して共有する
・フォローの時間を確保する
・雑談や気軽なやり取りを制度化している

このように「迎え入れる」ことを感覚ではなく日常の仕組みにしていくことで、既存の人間関係の良さが「新しい人にも伝わる優しさ」へと変わっていきます。

「空気を読まなくていい」環境をどう整えるか?

新人がつまずくのは、仕事そのものではなく「見えないルール」

訪問看護や歯科医院といった現場では、業務内容そのものよりも「その職場での動き方」「声のかけ方」「報告のタイミング」など、言語化されていない「暗黙の了解」によって新人が戸惑うケースが多く見られます。

たとえば、

・報連相は口頭?チャット?LINE?どのタイミングがベスト?
・昼休憩はどうやって取る?声をかける?自然に抜ける?
・雑談は歓迎される?それとも遠慮したほうがいい?

こうしたルールがあらかじめ明示されていないと、新人は常に「これで大丈夫か?」と不安を抱えながら行動せざるを得ません。結果として、「余計なことをしないように」「目立たないように」と、自分を制限し続けることになります。

暗黙知を可視化する=「配慮を求めない仕組み」

定着率の高い職場に共通しているのは、「気を遣わなくていい情報設計」が整っていることです。つまり、「知らなくて困る前に」「気を遣う前に」情報が差し出されている状態をつくることが、心理的安全性の第一歩になります。

具体的には、以下のような工夫が有効です。

グループウェアを使ったルール共有

・Slackのピン留め投稿、LINEノート、Googleドキュメントなどを活用
・「チャットの返信は既読スルーOK」「報告は●●時に●●で」など、曖昧なルールを明文化
・「新人向けQ&A」「よくある質問集」を蓄積しておくと、質問の心理的ハードルも下がる

感覚的なルールこそ先に伝える

・「昼は一人で静かに過ごす人も多いです」
・「敬語は基本的に使いますが、スタッフ間はやわらかく話してOK」
・「LINEグループではスタンプだけの返信も問題ありません」

こうした感覚ベースのルールは、放置しておくと「空気を読んで」察するしかなくなります。逆に、先に差し出すことで、新人は「知らなかったことで嫌われるかも」という不安から解放されます。

「ルールのためのルール」ではなく「安心するためのルール」へ

可視化の目的は、新人を縛ることではありません。むしろ、「何をしていいか分からない」という心理的な負荷を減らすための支援です。

そのためには、形式的なマニュアルではなく、過去の実例を元にした「つまずきポイントの共有」が有効です。

例)Q&A形式の「空気読まなくていいマニュアル」

Q:昼食は声かけてから取るべきですか?
A:誰かが先に行っても問題ありません。気になる場合は一言声かけを。

Q:ミスをした時、まず誰に報告すればいい?
A:最初はメンター役の○○さんにLINEで伝えてください。

このように、「その場で悩む」前に、「知っていて安心できる」情報をあらかじめ用意しておくこと。それが、「空気を読まなくていい環境」の土台となります。

情報の伝え方次第で、新人の動きやすさが大きく変わる

医療現場では「失敗できない」「判断ミスは命に関わる」という背景から、職場全体が慎重で無言の緊張感を持っていることがあります。その空気を新人がそのまま受け止めてしまうと、「何もしないほうが安全」と感じてしまい、学ぶ機会や自ら動く勇気を手放すことにつながりかねません。

だからこそ大切なのは、「聞いてもいい」「間違っても大丈夫」「自分から動いても歓迎される」というメッセージを、空気ではなく、情報として明確に示すことです。

情報の伝え方が丁寧で具体的であればあるほど、新人は「このままで大丈夫なんだ」という安心感を得やすくなります。そうすることで、「失敗を避けるために黙っておこう」という判断ではなく、「迷っても前に進んでいい」という動き方を選びやすくなります。

言い換えれば、丁寧な情報提供は、新人の行動をしばるのではなく、「自分で動ける」選択肢を増やす手助けになります。それが、見えにくい不安を減らし、「ここでやっていけそう」という前向きな感覚につながっていくのです。

「察しないで済む職場」が、新人の定着率を変える

人は、情報が足りないときに「空気を読む」という手段を取ります。逆に言えば、情報が充分に差し出されていれば、空気を読む必要はなくなります。

「察して行動できる人が優秀」ではなく、「察しなくても自然に動ける環境」が優れているという視点に立てるかどうか。これは、新人だけでなく、今後多様な働き方を受け入れる医療・歯科現場にとっても、本質的な問いになるはずです。

明日から実行できる「定着率を高める3つの行動」

「関係性の良さ」から「受け入れの仕組み」へと視点を変える

新人が早期に離職してしまう背景には、「職場の人間関係が悪いから」ではなく、「新しく入った人のための動きが明確でないから」という要因が少なからず存在します。
つまり、どれだけ職場の雰囲気が穏やかであっても、新人にとって「どう動いていいか分からない」「誰に頼っていいか分からない」状態が放置されていれば、結果として孤立や不安を生み出してしまいます。

そこでこのセクションでは、訪問看護や歯科医院の現場で、明日から実践できる3つの行動を提示します。これらは特別な準備や大きな制度変更を必要としない、現場レベルで始められる内容です。

①「歓迎の流れ」を3つの時間帯に分けてあらかじめ組み立てる

新人の初出勤日を「その場の流れ」に任せるのではなく、「いつ・誰が・何をするか」を大まかに決めておくことが安心感につながります。ポイントは、時間単位のスケジュールではなく、午前・午後・終業前といった大まかな時間帯で全体の流れを考えておくことです。

例:歓迎の流れ(3つの時間帯)
出勤〜午前中:軽い自己紹介・業務の雰囲気を説明・顔合わせ
昼〜午後:見学や同行、業務の様子を見せながら会話を挟む
終業前:「今日どうだった?」と感想を聞く時間を確保

特別な歓迎会が必要なわけではありません。必要なのは、「あなたのことを見ている」「気にかけている」という関心が伝わる関わりです。

②「なんとなく」で伝わっている情報を、誰でも見られる形にまとめる

多くの職場では、経験者同士の中で「共通認識」が自然とできあがっています。しかしその内容は、新人にとって「誰にも教えられないまま迷う領域」となり、居心地の悪さにつながります。

そのため、「知っている前提」になっている情報を、誰でも見られる状態にしておくことが重要です。

例:歓迎の流れ(3つの時間帯)
・チャットの返信マナー(既読スルーOK/スタンプだけもOKなど)
・昼休憩のタイミングや取り方
・報告・連絡・相談の手段(誰に/どのタイミングで/どう伝えるか)
・ミスが起きたときの報告フロー

形式は自由です。LINEノート、Slackのピン留め、Googleドキュメント、紙のマニュアルなど、職場に合った方法で構いません。重要なのは、“わからない”を一人で抱えさせないことです。

③「この人に聞けばいい」が一目でわかるようにする

新人が質問できない最大の理由は、「誰に聞いていいか分からない」ことにあります。よくある「困ったら誰でも聞いてね」という声かけは、かえって「誰にも聞けない状態」を生んでしまう場合もあります。

そこで、新人が最初から安心して頼れる存在を明示しておくことが有効です。

例:頼れる人の「見える化」方法
・ウェルカムメモに「今週の相談役:○○さん」と記載
・LINEやチャットのプロフィール欄に「質問対応:○○」と記載
・新人用ロッカーやデスクに「困ったらこの人に聞いてOK」カードを設置
・質問専用チャットグループを作成し、誰でも投稿しやすくする

さらに、その担当者から「こういう質問でも気にしなくていいよ」と一言伝えてもらうだけで、新人は安心して声をかけやすくなります。

小さな仕掛けが、大きな定着につながる

ご紹介した3つのアクションは、いずれも大がかりな制度や時間を必要とするものではありません。むしろ、日々の動きの中で自然に取り入れられる「小さな気づき」の積み重ねです。

人間関係の良さがある職場だからこそ、それを「内向きの安心感」ではなく「外から来る人に届く安心感」へと変えていくこと。その視点の切り替えが、新人の定着を左右します。

明日から、できることから一つずつ取り入れてみてください。それが、誰にとっても働きやすい職場への第一歩となります。


監修者:権守 泰純(Yasuyoshi Gonmori)

株式会社HOAP代表取締役。2022年に創業し、医療・介護業界に特化した採用支援事業を展開。現在は訪問看護・訪問診療訪問歯科など在宅分野からクリニックなど、業界特化で採用支援事業を展開。


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