クリニックにおける医療事務採用難を解決するブランディング戦略

ブランディングについて話し合う医師と看護師と医療事務

クリニックでの医療事務採用に悩んでいる院長は多いのではないでしょうか。

「求人を出しても応募が少ない」
「採用できてもすぐに辞めてしまう」
「職場の雰囲気がうまく伝わらない」

といった課題は、日々の採用活動で頻繁に耳にする声です。

特に医療事務は、患者対応や受付業務、事務処理など業務が多岐にわたるため、適性が求められる職種です。

一方で、応募者が求める「働きやすさ」や「やりがい」とクリニック側の認識にズレが生じやすく、採用しても長続きしないケースが少なくありません。

そこで本記事では、クリニックの採用ブランディングにフォーカスし、特に医療事務スタッフの採用と定着を促進するための方法について解説します。

SNSを活用した情報発信や、実際に働くスタッフの声をどのようにブランディングに活かすかを具体的にご紹介します。

医療事務の採用活動を改善し、効果的なブランディングを構築するためのヒントをお届けします。

目次

医療事務の採用が難しい理由とは?

医療事務の採用が難しい背景には、業界特有の課題がいくつかあります。

まず一つ目の要因として、医療事務自体が人気職種であることが挙げられます。事務職でありながら医療現場に関われる魅力があるため、多くの求職者が応募を検討しますが、その反面、求められるスキルや適性が多岐にわたるため、採用後にミスマッチが生じやすいのが現状です。

業務内容が幅広く、求職者と現場のギャップが発生

医療事務の主な業務には、受付対応、会計業務、レセプト処理、カルテ管理などがあり、クリニックの規模や専門性によって求められるスキルが異なります。

特に、電子カルテの操作や医療保険制度の知識は、未経験者にとって大きな壁となることが多く、「思っていたより難しい」と感じてしまい、早期離職につながるケースが見られます。

業界全体の人手不足と競争の激化

さらに、近年の医療業界では人手不足が深刻化しており、特に中小規模のクリニックでは採用競争が激化しています。

大規模病院や人気クリニックに比べて待遇や労働環境で劣る場合、「もっと良い条件の職場があるのでは」と感じる求職者が多く、応募自体が集まりにくいという課題も浮かび上がります。

働き方や環境のギャップが離職を招く

入職前に期待していた働き方と、実際の現場とのギャップも離職につながる要因です。

「アットホームな雰囲気を期待していたが、実際には忙しすぎてコミュニケーションがとりづらい」「休みが取りやすいと聞いていたが、実際は違った」といったミスマッチが離職の引き金になるケースが多く見られます。

採用ブランディングが求められる背景

クリニックにおける医療事務の採用が難しい背景には、採用ブランディングの不足が挙げられます。特に、中小規模のクリニックでは大手病院と比較して、職場環境や魅力が伝わりにくく、結果として応募者が集まりづらいという課題があります。

職場環境が見えにくく応募を遠ざける

クリニックごとに働き方や雰囲気は異なりますが、その実態が求職者にうまく伝わっていないことが多いです。

求人情報では給与や勤務時間などの基本情報は伝わっても、「どんな雰囲気なのか」「どのような価値観で働いているのか」という部分が不透明になりがちです。これが原因で、求職者が「自分に合う職場かどうか」を判断できず、応募をためらう要因となります。

また、医療事務という職種の特性上、デスクワークだけでなく対人業務も多いため、職場の空気感やスタッフ同士の関係性が、働きやすさに直結します。

しかし、そのような「職場のリアルな雰囲気」や「業務を通じて感じるやりがい」を伝える機会が少ないため、応募者が職場をイメージしづらくなり、結果的に採用ミスマッチが生じやすい状況となっています。

医療事務ならではの働きがいや魅力が伝わらない

医療事務の仕事には、患者さんとのコミュニケーションや、チームの一員として現場を支えるという魅力があります。しかし、これらのやりがいや達成感が求人ページや情報発信に反映されていないことが多く、「ただの事務作業」と捉えられがちです。

特に、実際の業務エピソードやスタッフの声が少ないと、職場のリアルな魅力を感じ取れず、他の病院やクリニックとの差別化が難しくなります。

例えば、「患者様から直接感謝の言葉をもらう場面」や「スタッフ間でサポートし合いながら業務を進める瞬間」など、実際に働いているからこそ感じられるエピソードを発信できれば、応募者にとって「やりがい」や「働きがい」が明確になります。

このように、自医院の医療事務ならではの魅力をしっかりと伝えることで、他とは異なる価値を理解してもらうことができ、応募意欲の向上につながります。

SNSやWebを活用した情報発信の不足

近年、SNSやWebサイトを使った採用ブランディングが注目されていますが、クリニック特有の情報発信が難しいという現状もあります。特に医療事務の採用では、「クリニックの日常」「働くスタッフの生の声」をリアルに伝えることが重要ですが、忙しい現場ではなかなか情報発信にまで手が回らないケースがほとんどです。

例えば、Instagramなどを活用して、院長の想いや実際のスタッフの働き方をテーマにしたコンテンツを投稿することは効果的ですが、その準備や運用には手間がかかるため、実施しているクリニックは多くありません。そのため、他のクリニックとの差別化が図れず、応募者が他院に流れてしまうという事態が発生します。
また、採用広報としてSNSを活用する際、単なる広報活動にとどまらず、求職者の視点を意識した情報発信が求められます。具体的には、働きやすさのアピール入職後のキャリアパスを示すコンテンツなどがあると、応募者にとってもイメージしやすくなります。

クリニックの強みを伝えられていない問題

クリニックが持つ強みや特長を明確に伝えることができていないことも、採用ブランディングがうまくいかない要因の一つです。

例えば、「地域密着型で患者との関係性を重視している」や「スタッフ同士のチームワークが良い」といった特徴を発信することは大事ですが、もっと大切なのは「なぜそのような想いを持っているのか?」や「なぜスタッフ同士のチームワークが良いのか?」という”理由”です。

求人情報においては、業務内容の羅列だけではなく、「働く魅力」や「職場の雰囲気」を的確に伝える文章が重要です。

現場スタッフのインタビューや、実際のエピソードを交えた紹介を含めることにより、より一層共感を呼びやすくなり、採用ブランディングが強化されます。

医療事務採用におけるブランディング戦略

医療事務の採用を成功させるためには、ブランディング戦略を明確にし、効果的に実行することが重要です。

クリニックの魅力を最大限に伝え、求職者が「ここで働きたい」と感じるためには、どのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。

ここでは、医療事務の採用ブランディングを進めるための3つの戦略について解説します。

1. ターゲット設定を明確にする

採用ブランディングを効果的に行うためには、まず採用ターゲットを明確にする必要があります。

医療事務と一口に言っても、未経験者を歓迎するポジションなのか、即戦力を求めているのかによって、アプローチ方法は大きく異なります。

例えば、未経験者向けであれば、「研修制度が充実している」「経験がなくても安心して働ける」ことを強調する必要があります。一方、即戦力を重視する場合は、「これまでの経験が生かせる環境」「専門性が評価される職場」といったアピールが効果的です。

このように、応募者のペルソナを具体的に描き出し、それに合わせたブランディングを進めることが大切です。

2. 現場のリアルな声を活用する

医療事務の採用ブランディングでは、現場スタッフの生の声を活かすことが極めて重要です。

クリニックの求人情報では、給与や勤務時間のような数値情報にばかり焦点が当たりがちですが、実際には「どんな人と一緒に働くのか」「職場の空気感」は応募者にとって重要な判断材料です。

そこで効果的なのが、働いているスタッフのインタビューや日常の一コマを紹介することです。

例えば、「患者様との温かいやりとりがモチベーションになっている」といった実際の声を伝えることで、応募者が働くイメージを具体的に持てるようになります。

さらに、スタッフ紹介記事や短い動画でのインタビューをSNSに掲載することで、リアルな雰囲気が伝わりやすくなります。

特に、「困ったときにすぐ相談できるチーム体制がある」「未経験でも教えてもらえる環境が整っている」といった具体的でリアルなエピソードがあると、求職者の不安を解消し、応募意欲を高める効果があります。

3. 福利厚生や働きやすさを強調する

医療事務の仕事は、デスクワークに加えて受付対応やカルテ管理など、多岐にわたる業務が含まれます。そのため、働きやすさをしっかりと打ち出すことが大切です。

特に、ワークライフバランスを意識した働き方が可能である点を明確に伝えることが重要です。

例えば、以下のようなポイントを強調すると効果的です。

柔軟な勤務時間の設定 子育て中でも働きやすいシフト制を導入している事実とその理由
教育研修制度の充実 未経験者向けにどのような研修を整備しているか
教育研修制度の充実 未経験者向けにどのような研修を整備しているか

こうした福利厚生やサポート体制を具体的に紹介し、安心して働ける環境であることを強調することで、採用ブランディングが強化されます。また、「自分がそこで働くイメージが持てるか」という視点を意識して、情報を発信することが肝要です。

明日からできる採用ブランディングの取り組み

医療事務の採用ブランディングを強化するためには、現場スタッフの意見を取り入れながら、小さくても継続的な取り組みを実施することが大切です。

ここでは、クリニックがすぐに取り組める実践的な方法をいくつかご紹介します。

1. 現場スタッフの声を集めて活かす

採用ブランディングを成功させるためには、実際に働くスタッフの意見や感想を反映させることが重要です。

まずは、現場スタッフへの簡単なアンケートを実施し、「働きがいややりがい」「職場の魅力」を自由に語ってもらいましょう。

特に以下のような質問を設けると、応募者が知りたいポイントを引き出せます。

「医療事務として働くやりがいを教えてください。」
「このクリニックを選んだ理由は何ですか?」
「働く中で感じたサポート体制の良さは?」

アンケート結果をSNSや採用サイトに活用

集まった意見をInstagram投稿や採用サイトのコラムとして活用し、スタッフのリアルな声を届けましょう。

「入職1年目スタッフの声」「長く働き続けられる理由」といったテーマでまとめると、求職者の関心を引きやすくなります

2. 簡単に始められるSNS投稿パターン

SNS活用に慣れていないクリニックでも、求職者が応募前に欲しい情報を事前に洗い出してコンテンツを準備することで効率的に情報発信が可能です。

例えば、以下のようなフォーマットを作成しておくと、投稿作業がスムーズになります。

投稿に使えるフォーマット例:
〇〇スタッフの1日
朝礼→受付対応→事務作業→診療補助→終業までの流れ
スタッフインタビュー
「〇〇さんが医療事務を選んだ理由」
業務のコツ紹介
「受付で心がけているポイント3つ」

3. 採用サイトを活用してブランディング強化

採用ブランディングを強化するためには、求人ページや採用サイトを一貫性のあるメッセージで整えることが必要です。

特に、SNSで発信したスタッフの声や日常風景を採用ページにも掲載することで、求職者が情報を探しやすくなります。

必要なコンテンツ例:
スタッフインタビュー集
長期勤務スタッフやリーダー層に、医療事務としてのやりがいや働き続けられる理由を語ってもらう
働きやすさを強調したコンテンツ
スタッフのシフト制の柔軟さや、プライベートとのリアルな両立エピソードを掲載
院長やスタッフの想い
クリニックの目指す方向性や院長の想い、スタッフの想いなどを掲載

採用ブランディングの取り組みは、継続的な情報発信と振り返りの積み重ねが大切です。

特に、現場スタッフを巻き込んだSNS活用は、求職者にリアルな職場像を伝えるための効果的な方法です。出来るところから1つずつ挑戦していきましょう。



監修者:権守 泰純(Yasuyoshi Gonmori)

株式会社HOAP代表取締役。2022年に創業し、医療・介護業界に特化した採用支援事業を展開。現在は訪問看護・訪問診療訪問歯科など在宅分野からクリニックなど、業界特化で採用支援事業を展開。


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