訪問看護師を紹介会社に頼らず採用するための5つの具体策

スマホを見て微笑んでいる看護師

訪問看護ステーションとして、看護師の採用は非常に大きな課題です。特に現場では即戦力となる経験者や、「訪問看護に挑戦したい」という意欲的な新人の確保が求められています。多くの訪問看護ステーションが人材紹介会社を利用していますが、そのコストやマッチング精度に疑問を抱くケースも少なくありません。

人材紹介会社を利用することで、求人情報の露出が増え、採用活動を効率化できるメリットがあります。しかし、その一方で発生する高額な紹介手数料や、紹介される人材のミスマッチが悩みの種となっているのも事実です。特に訪問看護の現場では、事業所ごとの特色や働き方が異なるため、紹介会社を介しての採用が必ずしも効果的とは限りません。

こうした状況を踏まえ、訪問看護ステーションが「紹介会社に頼らない」採用手法を取り入れる動きが増えています。自社で採用力を高め、コストを削減しながら、より自分たちに合った看護師を採用するためにはどうすれば良いのでしょうか。

本記事では、訪問看護ステーションが紹介会社に頼らずに効果的に採用を進めるための具体策を解説します。

目次

訪問看護師の採用で紹介会社に頼らないメリット

訪問看護ステーションが看護師を採用する際に、人材紹介会社を利用するケースは少なくありません。しかし、紹介会社を介さずに自社で採用活動を行うことで、コスト削減や採用精度向上といったさまざまなメリットが得られます。

ここでは、紹介会社に頼らないことで得られる3つのメリットを解説します。

1. コスト削減につながる

人材紹介会社を利用する最大のデメリットは、そのコストです。採用が決まると、年収の20〜30%に相当する紹介料が発生することが一般的であり、特に年収が高めの看護師の場合には大きな負担となります。

自社採用に切り替えることで、こうした紹介料をカットでき、採用コストを大幅に削減することができます。例えば、SNSや自社採用サイトを活用すれば経営的にも効率的です。

2. 採用の自由度が高まる

紹介会社を介すると、あらかじめ設定された条件に基づいて候補者が選ばれるため、自社の基準に合わない人材が紹介されることもあります。

自社採用では、ステーションの方針や現場の状況に応じて、柔軟に採用基準やペルソナを変更することが可能です。例えば、応募者の人物像を重視した採用や、面接を複数回実施して本音を引き出すなど、自社に合った選考プロセスを柔軟に設計できます。

3. 自社の魅力を直接伝えられる

人材紹介会社を通じた採用では、求人情報がフォーマット化されてしまい、自社ならではの特徴が伝わりにくくなるケースが多々あります。そのため、求職者がステーションの雰囲気やリアルな働き方を実感しづらく、ミスマッチが生じるリスクが高まります。

自社採用であれば、公式サイトやSNS、求人媒体を通じて、リアルな職場の魅力を発信することができます。例えば、実際に働くスタッフの声や、訪問看護師の一日の流れを動画で紹介するなど、働きがいやチームの雰囲気を具体的に伝えられるのです。こうした発信を続けることで、「ここで働きたい」と感じてもらえる効果が期待できますし、応募段階でのミスマッチも軽減していきます。

紹介会社に頼らない採用が向いているケース

1. 採用コストを抑えたい場合

訪問看護ステーションにとって、人材紹介会社を利用する際の紹介料は大きな負担となります。採用時には年収の20〜30%の手数料が発生することが一般的であり、特に事業規模が小さい場合には経営に響くことが少なくありません。

自社採用に切り替えれば、求人サイトの掲載料やSNS運用コストだけで済むため、総額としてのコストを大幅に削減できます。特に採用数が多くない中小規模の訪問看護ステーションでは、自社採用を積極的に検討する価値があるでしょう。

2. 自社の魅力を直接発信したい場合

訪問看護の現場では、ステーションごとの特色や働き方が異なるため、求職者にとって職場のリアルな雰囲気を知ることが重要です。しかし、紹介会社を通じた求人では、求人側が求職者に直接自社のことを伝えるわけではないので、特色が十分に伝わらないことが多々あります。

自社で求人情報を発信する場合、SNSや自社採用サイトを活用して、現場スタッフの声や働き方を直接アピールできます。実際に働くスタッフのエピソードや、経営者の想い、訪問看護のリアルな情報を届けることで、求職者の共感を得やすくなります。

3. 長期的な採用基盤を整えたい場合

紹介会社に依存した採用活動は、一時的な人材確保には適しているものの、長期的な採用基盤の構築には向きません。特に、紹介料が発生するたびに経営負担が大きくなるため、常に紹介会社の紹介に依存している採用体制はリスクが伴います。

自社採用に切り替えることで、求人情報発信のノウハウを蓄積でき、次回以降の採用活動がスムーズになります。SNSや求人サイトを活用した情報発信力を強化し、ブランド力を高めておけば、継続的に応募者が集まる仕組みを中長期的に作ることができます

紹介会社に頼らず採用するための具体策

1. 医療系専門の求人媒体の活用

訪問看護師を自力で採用する際、医療系に特化した求人媒体を活用するのは基本の手段です。一般の求人サイトでは他業種の情報が混在しがちですが、医療専門サイトを利用すれば、業界経験者や医療従事者が集まりやすくなります。看護師などの国家資格保持者は、「看護師として働きたい」というよりも、「病院内の特定の診療科で働きたい」や「在宅医療の分野に携わりたい」といった、専門性を重視した仕事探しを行う傾向があります。

・専門性を重視した求人情報の掲載
訪問看護の具体的な仕事内容や求めるスキルを詳細に記載し、求職者が「自分の経験が活かせそう」と感じられる内容を心がけましょう。
求人情報の鮮度を保つ
長期間同じ内容で掲載していると、「更新がない=採用意欲が低い」と見なされがちです。定期的に内容を見直し、最新の情報を反映させることが大切です。
媒体担当者と相談し、効果的な掲載方法を検討
求人媒体ごとに効果的な打ち出し方が異なるため、専門媒体の担当者に相談し、自社の魅力を最大限に引き出す方法を模索しましょう。

2. SNSの強化

SNSを活用した採用活動は、コストを抑えつつ幅広い層にアプローチできるため有効です。InstagramなどSNSで情報発信を行うことで、求職者に直接アプローチできます。

採用専用アカウントを運用
通常の企業公式アカウントや広報アカウントとは別に、採用専用のSNSアカウントを作成し、職場の雰囲気や働き方を発信します。投稿内容を採用関連に特化させることで、求職者が必要な情報を見つけやすくなります。
リアルな職場風景やスタッフの声を動画で発信
特に訪問看護では、働き方や人間関係が気になるポイントです。スタッフが直接語る動画や、業務の流れを紹介する動画を投稿し、応募者が働く姿をイメージできるようにしましょう。
良いことばかりでなく課題点などマイナス面も発信
求人情報では、職場の魅力やメリットを強調しがちですが、現実を正直に伝えることも大切です。訪問看護の現場には忙しさや困難も伴いますが、そのリアルを発信することで、誠実な姿勢が求職者の信頼を得やすくなります。またステーションの課題点などのリアルを発信することで入職後のミスマッチの軽減が期待できます。

3. 自社採用サイトの強化

公式サイトに専用の採用ページを設け、求人情報やステーションの様子をわかりやすく発信することは、自社採用を成功させる上で不可欠です。求職者が自分達のステーションについて知りたいと思った時、公式サイトに充実した情報があることで、信頼感を高める効果があります。

求人情報をわかりやすくまとめる
仕事内容や求めるスキル、勤務条件を整理し、見やすいレイアウトで掲載します。訪問看護特有の働き方(直行直帰、オンコールの対応など)を明確にすることで、求職者が事前に持つ不安を解消します。
スタッフのインタビューや業務紹介を掲載
実際に働くスタッフが語る「仕事のやりがい」や「訪問看護への想い」を紹介することで、リアルな職場感を伝えられます。スタッフの生の声は、求人広告だけでは伝わらない「本音」を感じ取れるため、入職意欲を引き出す効果が期待できます。
応募手続きの簡素化
エントリーフォームを簡潔にまとめ、スマホ対応を意識したレイアウトにすることで、スムーズに応募できる環境を整えましょう。面倒な入力が多いと離脱率が高まるため、必要最低限の情報だけを求めるようにします。

紹介会社に頼らない採用を成功させるための5つのアクション

訪問看護師を紹介会社に頼らず採用するためには、戦略的かつ継続的な取り組みが求められます。自社採用を効果的に行うためには、適切なツールの活用や情報発信力の強化が不可欠です。

ここでは、訪問看護ステーションがすぐに取り組める具体的なアクションを5つ紹介します。

1. 採用活動のPDCAサイクルを確立する

自社採用において、単発で終わる採用活動では効果が限定的です。計画(Plan)→ 実行(Do)→ 評価(Check)→ 改善(Act)のサイクルを取り入れ、常にプロセスを見直す体制を作りましょう。

採用目標を明確化する:「いつ」「どのような人材が」「どのくらい」必要か、経験年数や資格要件はどうかなど具体的なペルソナを整理します。
応募状況を定期的に分析する:どの媒体からの応募が多いか、どの求人が効果的かをチェックし、データを基に改善策を立てます。
改善ポイントを共有する:採用に関わるスタッフ間で、成功事例や反省点を共有し、チームとして採用力を強化します。

2. 採用専任担当を配置する

自社採用を推進するためには、専任担当者を置くことで継続的かつ一貫した対応が可能となります。また専任の担当がいないとスピーディーな対応が出来ず、離脱につながります。

SNSや求人媒体を定期的にチェックする習慣をつける:応募者からの問い合わせに迅速に対応し、レスポンスの速さで信頼を獲得します。
現場スタッフとの連携を強化する:日常業務や職場環境に関する情報を随時収集し、求人情報として更新できるように準備します。
採用担当者自身がSNSに登場する:採用担当の顔が見えることで、応募者が安心して問い合わせできる環境を作ります。

3. 継続的な情報発信をルーティン化する

採用広報活動では、一度発信して終わりではなく、定期的に更新することが重要です。特にSNS運用では、発信の間隔が空くとフォロワーの関心が薄れるため、日常的な情報発信が不可欠です。

週ごとのテーマを決めて投稿する:例えば、「月曜はスタッフインタビュー」「水曜は現場の風景紹介」といったルーティンを作ることで、更新が継続しやすくなります。
フォロワーとの交流を重視する:コメントへの返信やメッセージ対応を欠かさず行い、リアルタイムのやり取りで関係性を築きます。
採用に特化した情報を発信する:採用に関係のない投稿は別アカウントで行い、「求職者が欲しい情報を欲しい場所で欲しい時に入手できる」ようなアカウントにする。

4. 採用後のフォローアップを徹底し定着率を上げる

採用がゴールではなく、入職後のフォローをしっかりと行うことで、長期的な定着率向上が期待できます。特に訪問看護の現場では、1人での訪問に対する不安や人間関係が原因で退職するケースがあるため、サポート体制を整えましょう。

定期面談の実施:入職後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月と、段階的に面談を実施し、職場適応状況を把握します。
評価制度の明確化:業務量や対応力、チーム貢献度などを数値化し、透明性を持たせた評価を行います。
キャリアパスを示す:長期勤務のモチベーションを高めるため、キャリアアップの具体例を提示します。

5. 定着率向上を意識した採用ブランディング

「この職場で働きたい」と感じさせるブランディング戦略を立てましょう。魅力だけでなく実際の課題など職場のリアルを発信することでミスマッチが減り、定着率を高める効果が期待できます。

スタッフの成長エピソードを共有する:新人が成長して活躍している姿や不安を払しょくできたエピソードを伝えることで、入社前後のイメージが湧きやすくなります。
働きがいを感じられる職場づくり:福利厚生を活用したエピソードなど、実際のスタッフの声として発信することで職場のリアルがイメージしやすくなります。
長く働くスタッフの声を活かす:「他のステーションでなく、なぜここなのか?」というスタッフの実際のエピソードなどを発信することで、働いているイメージがしやすくなります。

訪問看護ステーションが紹介会社に頼らず採用を進めるためには、医療系求人媒体の活用SNSの強化自社採用サイトの充実が重要です。また、評価制度を明確化したり、スタッフの成長を支援する環境を整えることで、長期的な人材定着を図れます。

人材流出を防ぐことで「急募」な状態を回避でき、中長期的な目線で採用戦略を立てることができます。1つずつトライしてみてください。


監修者:権守 泰純(Yasuyoshi Gonmori)

株式会社HOAP代表取締役。2022年に創業し、医療・介護業界に特化した採用支援事業を展開。現在は訪問看護・訪問診療訪問歯科など在宅分野からクリニックなど、業界特化で採用支援事業を展開。


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